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5月17日に水戸ホーリーホック(以下、水戸)加入内定が発表された山本隼大 (経済4・名古屋高)は、サッカー部に籍を置きながら特別指定選手として水戸に帯同。すぐさま信頼をつかみ、在学中ながらJリーグ初出場、初得点を記録するなど、15試合に出場し、充実したシーズンを送った。
しかし、プロ入りをつかむまでは、決して順風満帆なサッカー人生を送ってきたわけではなかった。2011年から関東1部リーグ4連覇を成し遂げた名門サッカー部に入部したものの、チームは2部リーグ、県リーグ、3部リーグと低迷。個人としても思うような結果が出ない中、いかにしてJリーグ内定をつかんだのか、そして水戸での“プロ1年目”を振り返る。(前・後編の2回に分けてお届け。今回は後編)
▲在学中にJデビュー・J初ゴールをマークした山本
前編からの続き
○つかんだプロ入り 在学中にデビュー&初得点
最終学年を迎え、夢のプロ入りに一抹の不安を抱える中、山本のもとに水戸からの練習参加の誘いが舞い込む。初めての練習でも臆することなく、実力を発揮すると、3月の下旬には獲得のオファーが届いた。「自分と年齢の近い選手も多いし、若い選手が多くて、切磋琢磨して成長できる。スタッフの方々が優しくて、自分も色々声をかけてもらったりとかしたので、良いチームだなと思った」と迷わず、入団を決めた。フィジカルコンタクトの強さやメンタリティーなど、水戸の首脳陣から高評価を受けた山本には、それからほどなくして在学中にJリーグの試合に出場可能な特別指定選手の話が持ち上がる。専大を途中で離れる葛藤もあったが、東大樹監督や主将の松村厳 (法4・松商学園高)ら同期の後押しもあって水戸へ帯同することになった。
内定が発表された次の日の第16節大分トリニータ戦で、ベンチ入りすると、後半40分から出場し、いきなりJデビュー。そこから徐々に出場時間をのばし、第19節愛媛FC戦では初めてスターティングメンバーに名を連ねた。そして、迎えた第22節レノファ山口戦で、待望の瞬間が訪れる。山本は味方からのロングスローを受けると、素早い反転から右足を振り抜き、J初得点を記録。多くのサポーターが駆け付けたホーム戦でのゴールとなり、「特別指定という立場でも関係なく、本当のプロの選手と変わらないような応援をしてくれた。その皆さんの目の前で、得点できたのはすごく嬉しい」と喜びを噛み締めた。
その後は、負傷による離脱があったものの、15試合(先発8試合)に出場して1得点をマークし、“プロ1年目”を終えた。
▲6月にはアミノ杯の応援に駆け付けるなど、専大サッカー部を常に気にかけていた
○仲間との嬉しい再会
一足早くプロの舞台に立ったことで、仲間との嬉しい再会を果たした。
第21節の徳島ヴォルティス戦では、昨年まで専大サッカー部のヘッドコーチを務めた増田功作監督と対面。増田監督からは「水戸に決まって本当に良かったね」と声を掛けられた。大学時代にお世話になった恩師へ成長した姿を見せたいと意気込んだが、試合は0-1で水戸が敗れ、「来年はリベンジしたい」と闘志を燃やす。
最終節のヴァンフォーレ甲府戦では、昨年まで大学で一緒にプレーした村上千歩選手(令6・商卒)と対戦した。村上選手は山本と同じく攻撃的なポジションの選手で、一つ上の学年の先輩ということもあり、「背中をずっと見てきたので、追い付いて追い越せるように思うようになった」と話す。「大学で一緒にやっていて、また次の大きな舞台で会うというのはサッカーの魅力の部分でもある」と久しぶりの再会を喜んだ。
▲村上選手(10番)とは「(専大の)試合も結構見る」「水戸ではどんな感じなの」といった会話を楽しんだ
○水戸のレジェンドから学んだプロの姿勢
また、水戸に帯同したことで、2024シーズン限りで現役を引退した本間幸司さんのラストシーズンをともに戦うことができた。「(本間さんは)試合以外の練習とかでも、時には厳しい言葉をみんなにかけるし、それでしっかりチームも締まる」とその存在の大きさを語る。本間さんは歳の離れた山本に対しても「試合前とか『どんどんゴールを目指して足振っていけ』とか、『お前は良いシュートを持っているんだからどんどん振っていけ』と声をかけてくれた」と積極的にコミュニケーションを取った。経験豊富な大ベテランからプロとしての姿勢を学び、「本当に周りから尊敬されている選手で、僕も本間選手のようになりたいと思った」と大きな影響を受けた。
○専大でのラストゲーム 悔しさを糧に水戸での2年目へ
山本がプロの舞台で活躍する中、専大は関東3部リーグ戦を3位で終えて2部10位との参入プレーオフの出場権を獲得。Jリーグでの活動を終えた山本は、11月23日の参入プレーオフ、山学大戦前に久々に大学の練習に合流した。2部昇格を懸けた大一番にメンバー入りすると、ハーフタイム明けにピッチに送り出された。専大では約6か月ぶりとなる出場で、推進力のある仕掛けを見せたが、試合は1-1で終了して昇格は叶わなかった。山本は「(最後にみんなと)一緒にサッカーをできたことは良かったが、結果として去年と一緒で関東2部に上げられなかった」と悔しがった。専大は来季も再び3部を戦うこととなったが、後輩に向けては「きつい時もあるし、やりたくないって思う時もあると思うが、ひたむきにやり続けてほしい」と常に向上心を持ち続けてきた山本だからこそのエールを送った。
▲専大でのラストゲームに出場した
▲山本が不在の中、出番をつかんだ佐藤漣 (法1・成立学園高)には「自分の背中を追ってくれる後輩」と期待を寄せた。
推進力が魅力のドリブラーは来季、正式にプロの舞台へ進む。「2年目ぐらいの勢いで、チームを引っ張るような存在になりたい。今年は1ゴールという結果に終わってしまったので、ゴールとアシストで2桁に乗せたい」と目標を高々に宣言した山本。厳しいプロの世界でも持ち前の向上心で着実に歩みを進めていく。
山本隼大(やまもと はやた)経済学部4年 2003年2月12日生まれ
馬力のある力強いドリブル突破が魅力。今季印象に残った試合は帯同後、初勝利となった第20節ブラウブリッツ秋田戦。
〈インタビュー実施日=11月24日〉
文・写真=竹田一爽(文3)