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1月19日 平成29年度全日本卓球選手権大会 大会5日目 東京体育館
シングルスのベスト16入り、ダブルスのベスト8入りがかかった試合が行われた大会5日目。シングルスでは田添健汰(商4・希望が丘高)と田添響(商3・希望が丘高)、安藤みなみ(商3・慶誠高)の3人がベスト16まで勝ちあがり、ランク入りを果たした。田添健と田添響は初のランク入り、安藤は去年に続くランク入りとなった。ダブルスは安藤みなみ(商3・慶誠高)・鈴木李茄さん(平29商・日立化成)ペアと田添健・松平健太選手(木下グループ)ペアが5回戦まで勝ちあがり、ベスト16で大会を終えた。
▲自身初のランク入りを果たした田添健
≪男女ダブルス≫
安藤と鈴木さんのペアはこの日伊藤美誠選手(スターツSC)・早田ひな選手(日本生命)の「みまひな」ペアと対戦。たくさんの報道カメラに囲まれた中で試合は始まった。女子ダブルスの優勝候補相手にどのようなプレーをするか注目されたが第1ゲームは安藤・鈴木さんペアが先取。安藤の威力十分なフォアスマッシュが何度も決まり、まずは試合の主導権をつかんだ。しかし第2、第3ゲームを続けて落とし、一気に後がなくなる。第4ゲームはデュースにもつれた。ここから安藤と鈴木さんは粘りをみせ、このゲームを14-12で奪い、2-2のタイに持ち込んだ。最終ゲーム、序盤はリードしていたが中盤に逆転されると、最後までその差は縮まらず、7-11で惜しくも敗戦。それでもダブルスでトップクラスの実力を誇るペア相手にあと少しというところまで迫ったふたりの活躍は目を張るものがあった。
▲「みなひな」ペアをあと1歩のところまで追いつめた安藤と鈴木さん
○試合後のコメント
安藤
「こっちが何本打ってきても返ってきて、決まったなと思ったボールが返ってきました。1点を争う場面のとき、相手との差を感じました。勝ちきれず悔しいです。混合ダブルスのときは伊藤選手にサーブが決まっていたのに、今日はすごく警戒されていました。相手のレシーブミスは1つだけだったと思います。(第4ゲームの粘り)あそこは若干開き直りがありました。相手のラリーについていけるようになっていたのも大きいと思います。
(久しぶりに鈴木さんとペアを組んで)実業団に進まれてから、よりパワーアップしているって思いました。以前よりボールも強力になっていましたし、より組みやすいと感じました」
鈴木さん
「向かっていく気持ちを前半までは持てていたと思うのですが、後半から少しつなぎ気味のボールを返してしまったので、もう少しミスを恐れないプレーができればと思いました。第4ゲームは相手もあと1つ取ったら勝ちというところで守りにきていたように思えたので、こちらも攻めていけたかなとも思います。
(久々にペアを組んだ安藤について)もともと組みやすいと思っていたのですが、時間が空いてもそれは変わらなかったです。技術はもちろん、最後まで諦めないという精神面も強くなったようにみえました。今回、ふたりで新しいことにも取り組んだのですがそれも上手くいってより組みやすい選手になったなと思いました」
田添健・松平選手のペアは5回戦で明大の森薗選手・渡辺選手のペアと対戦。田添健にとってリーグ戦などで何度も顔を合わせたペアとの勝負となったが、今回この全日本でも対戦が実現した。先に2ゲーム目を奪うも、激しいラリー戦の末、相手の激しい粘りに退けられ、3-2で敗れた。
▲フルゲームの末惜しくも敗れた田添健・松平選手
▲試合後、互いの健闘を称え握手を交わした
≪男女シングルス≫
及川瑞基(商2・青森山田高)は5回戦で松平賢二(協和発酵キリン)選手と対戦。過去に全日本での対戦経験がある者同士の試合となった。及川は相手のサーブ、レシーブのタイミングがつかめず、甘いボールを返してしまうなどして3連続でゲームを落としてしまう。後がない状況で迎えた第4ゲームからサーブの出し方を変えてからは打ち合いでポイントを取るなど勢いを取り戻し、今度は3連続でゲームを奪った。最終ゲームは出だしにつまずき3-4で惜しくも敗れた。
▲及川は土壇場でスコアをタイに戻したが、勝利をつかむことはできず
安藤は5回戦を4-2で勝利し昨年に並ぶベスト16に進むと6回戦は石垣優香選手(日本生命)と対戦。国際経験も豊富なカットマン相手に安藤は思うような攻撃ができず、苦しい展開を強いられた。安藤も強気のスマッシュで果敢に攻めるも粘り強いカットで何度も辛抱強くリターンされ、思わず顔をゆがめる場面も。試合はゲームの奪い合いとなり、先に3ゲーム目を取ったのは安藤。3-2で迎えた第6ゲーム、ポイントも9-8で勝利まであとわずかというところまできたが、このゲームを逆転で落としてしまう。ここでリズムを崩した安藤は続く最終ゲームも落としてしまい、4-3で敗れた。試合後、安藤は「ダブルス2つが去年と同じ結果(ダブルスベスト16、混複ベスト8)だったので、シングルスだけでも上に行きたかった」と言葉を詰まらせた。
▲試合が終わり、悔しさをにじませる安藤
○試合後のコメント 安藤
「前半、自分の持ち味であるスマッシュで攻めようとしたのですが、なかなかやらせてもらえませんでした。もっと強気になって攻めていたらと思うと悔しいです。おたがい異質ラバーなので変化がすごくて、ちょっとでも浮いたら狙われてしまったので、そこが良くなかったかなと思います」
▲安藤はベスト16で大会を終えた
田添響は5回戦で平野友樹選手(協和発酵キリン)と対戦。去年の大会でベスト4まで勝ち残った実力者だ。第1ゲームは平野選手が先取するも、第2ゲームは激しいデュースの末に15-13で田添響が奪った。これで波に乗ったか、田添響は持ち前のパワーあふれるラリーで平野選手を圧倒。試合の流れをつかみ、そのまま3連続でゲームを奪って4-1で勝利。相手もどうにかしてペースを乱そうとしてきたが、それを上回る対応力で押し切った。続く6回戦はストレートで負けたが、この全日本の場でこれ以上ない大金星をあげてみせた。
▲5回戦で昨年ベスト4の平野選手を破った田添響
○試合後のコメント 田添響
「まさか平野選手に勝てるとは思いませんでした。相手は格上なので、1球1球全力でいきました。思いっきりプレーできたのがよかったです。6回戦は実力の差がありすぎて何も出来ずに終わってしまいました。すごく強かったです…。兄含め、同じ希望が丘高出身の仲間が勝ち残っていたので、みんなでがんばろうと話していました。今回の大会で平野選手を倒して初めてランク入りしたことは自分にとってすごく自信になりました。来年度の専大は団体戦でトップを目指せるメンバーがそろっているので、今度こそ春秋のリーグ戦とインカレ、全部優勝を目指したいです」
▲来季はさらなる活躍が期待される田添響
弟・響が躍動している中、兄・健汰も奮闘していた。5回戦ではスーパーシードの笠原弘光選手(協和発酵キリン)と対戦。「弟の響が勝ったのが見えたので自分も勝ちたいという思いが強くなった」という田添健は試合中盤で微妙な判定に泣かされるも、気持ちを切らすことなく4-3で勝利。水谷隼選手(木下グループ)への挑戦権を得た。
▲フルゲームの末、6回戦へ駒を進めた田添健
試合前は「こういう舞台で水谷選手と当たることもないので、ぶつかっていくつもりでいきたい」と話していた田添健。過去9度の優勝を誇る絶対王者・水谷選手と専大のエースの対戦が実現した。試合は第1ゲームを水谷選手が選手。第2ゲームは田添健のサーブで主導権を握り、距離の長いラリー勝負に持ち込むと11-3で水谷選手からゲームを奪った。その後はサーブの見極めに苦戦し、連続してゲームを奪われ敗れるも、最後まで自分の卓球を見失わずに実力を出し切った。試合をそばで見守った高宮啓監督も「チャンピオンを前にしたら自分の卓球を見失うのが普通だと思うが、自分の力は発揮できていた」と田添健の健闘を称えた。
○試合後のコメント 田添健
「いいプレーができたと思いますが、サーブで左右に振られてしまいました。長さや高さをあえて変えてきたりとか、方向が分かっていても思うようにレシーブできませんでした。第2ゲームは自分のサーブが上手くはまって取れました。ラリーまでもっていければ嫌ではないなと思っていたのですが、そこいくまでが大変だと思いました。(大会を振り返って)サービスエースなど今までにない新しい点の取り方ができたので、そこは良かったと思います」
▲絶対王者・水谷選手を相手に1ゲームを奪った田添健
4年生にとっては大学生活の集大成とも言えるこの全日本卓球選手権。大会を終えて、女子主将の堀優美(商4・慶誠高)に大会を振り返ってもらうと共に、今後のことについて話してもらった。
「今回の試合はチャンスがあっただけにすごく悔しいです。自分の練習をする時間が少ない中ではありましたが、去年の女子ダブルス・ミックスダブルスベスト16という成績を上回りたいという気持ちがあったので達成できず悔しいです。専大での4年間を振り返ると、世界で活躍する選手と一緒に練習できて刺激になりましたし、団体戦ではインカレ、全国ともに優勝できたので良い思い出になりました。4年間悔いはありません。卒業後は、指導者の道に進みます。私は特にジュニアの子を強くすることに力を入れたいので、まずは自分自身がもっと勉強して、自分が経験してきたことをジュニアに教えてあげられる指導者になりたいです」
大会を終えて、男子の高宮監督にコメントをもらった。
「去年は男子からシングルスで誰もランク入りさせられませんでしたが、今年は(田添)健汰と響とふたりがランク入りしてくれました。特に響は立派だったと思います。平野選手との試合は彼の良さが全部出た試合でした。相手が仕掛けてきても動じない、精神的なところも成長を感じましたね。一方で郡山と三部が初戦で負けてしまって、この全日本で力を発揮することの難しさもまた課題の1つと感じました。加藤と青柳がダブルスで4回戦まで行ったのも立派だと思います。学生内でやる大会はもちろん、こういったシニアも混じった大会で活躍してこそ、専修大としての意義が証明されると思うので、選手全員上位を目指して年末から練習をしてきましたが、その成果が出たと思います。強い気持ちを持ってみんな大会に臨めたのではないでしょうか。
(来年度に向けて)田添響、郡山、三部、及川この4人を中心に戦っていくことになりますが、団体戦でも個人でも学生の頂点に立てるよう、がんばっていきます」
かくして、専大生たちの全日本卓球は幕を閉じた。今年の専大は男子が春のリーグ戦で優勝。インカレと秋リーグは明大に優勝を譲ったが、あと1歩のところまで食らいついた。来季は絶対的エース・田添健が抜けるが、彼の意志を受け継ぐ郡山や田添響らが打倒・明大を掲げ、目標とする3冠を目指す。女子では安藤が全日学で初の優勝を飾ったほか、枝松亜実(人間科学1・山陽女子高)と牧之内菜央(文1・遊学館高)が新人戦で準優勝するなど、王座奪還に向けて楽しみな材料がそろった。来季は最高学年となる安藤がどのようにしてチームを牽引していくか、あるいは個人としてどれほどの成績を残せるか注目だ。
(文=飛田翼・文3、写真=冨樫幸恵・文3)