News

最新ニュース


2017.08.21
spotlight

スポットライトVOL.4 超攻撃型で相手を圧倒する剣道部・平野青地

専修大学体育会学生の中から、ある選手に焦点を当てていく企画「スポットライト」。いつも以上にクローズアップされた選手たちの姿を専スポがお届けしていきます。第4回は専大生として13年ぶりに全国大会の決勝に進んだ剣道部の平野青地(文3・東福岡高)にスポットライトを当てた。


 7月23日に大阪府立体育館で行われた第65回全日本学生選手権大会。自身2度目の出場となった平野はトーナメントを順調に戦い抜き、一気に決勝戦まで勝ち進んだ。専大生がこの大会で決勝戦に進出したのは実に13年ぶりの出来事だった。惜しくも決勝戦では敗れて優勝こそ逃したが全国の舞台で躍動した平野に、専スポは今回インタビューを実施した。


―はじめに、この前の大会(全日本学生選手権)を振り返ってください。

「まさか自分が決勝戦まで行けるなんて思ってもいませんでした。1回戦と2回戦は自分が思っているような試合ができなくて、調子も上がらなくて不安でしたが、ベスト16を決める試合でこれまでで1番納得のいく勝ち方ができて、そこで気持ち的にも楽になりましたね」


―今回の大会は170人近い人が参加し、1日で初戦から決勝まで計7試合を戦いました。疲れなどはありませんでしたか。

「確かに終わった後はしんどかったですけど、全部終わるまで気を張っていましたし、大会中は体力のことは気になりませんでした。試合の時間以外はリラックスできていたと思います。規定の時間内で決着した試合も多かったですから」


―専大生が今大会で決勝戦に進出したのは13年ぶりの出来事でした。このことはご存知でしたか。

「決勝のことは初めて知りました。自分が決勝まで行ったことを周りの人も驚いていましたし、なにより自分が1番驚いています。この大会に出るのはこれで2度目でしたが、去年は大会に出たところで満足していました。決勝までいったからにはやっぱり勝ちたかったですけど、負けたということは自分に何か足りないものがあったからだと思います。でも、準優勝できて自信がつきましたし、来年もこの決勝の舞台に立てるよう、これからもしっかりやっていくつもりです」

▲素早い動きで相手の面を狙う平野(写真は剣道部より提供)


 平野は一般的な剣道の構えより竹刀をより高く構える「上段の構え」という構えの使い手である。実際に習得するにはかなり高度な技術が必要とされるこの構え。平野はどのようにして自分のものにしていったのだろうか。そのことについても質問してみた。


※上段の構えとは 

竹刀を頭上に高く振り上げる構え方。竹刀を振り下ろすだけで素早く攻撃に移ることができる、片手打ちができるためリーチの長い攻撃が可能であることから、完全攻撃型の構えとされ、火の構えと呼ばれることもある。一方で、構えているときは面以外の部分をさらしている状態なので防御面は一般的な構えに比べかなり弱い。


―平野選手が考える上段の構えの良いところはどんな点ですか。

「いつでもすぐ攻撃に移れるところです。自分からドンドン攻めていくタイプなので、この構えは自分に合っていると思います。防御が弱いのが欠点ですが、そこは足を使って相手との間合いを広くするなどしてカバーしています」


―上段の構えに変更したのはいつごろですか。

「高校1年生だったときの6月です。そのときの先生からやってみないかと勧められたのがきっかけでした。構えを変えるには、またイチから練習をやり直さなければいけませんでしたし、果たして自分に合うのだろうかと最初は不安だらけでしたが、その頃の僕は試合でもあまり勝てていなかったので、いい機会だと思ってチャレンジすることにしました。練習を始めるとき、先生から『1度上段の構えにしたら、もう元には戻せない』と言われましたが、その一言でむしろ決心がつきましたね」


―構えを変える中で苦労したことはありますか。

「最初の1ヶ月間は他の同級生とは別のメニューで練習しました。そのときはしんどかったです。でもやるしかありませんでしたから。先生の用意したメニューをひたすら必死にこなす日々でした。練習を始めてからレギュラーとして試合に出られるようになるまで半年かかりました。最初はただ勢いで勝つことができたけど、またすぐに課題が見つかって、そして先生の言うことを聞いてまた練習する、その繰り返しでした。高校2年の冬、ようやく自分のスタイルが確立してきたなと思えたとき、手首を傷めるケガをしてしまいました。とても悔しかったですが、その時期に自分をもう1度見つめなおすきっかけになったので、大事な時間だったと思っています」

▲上段の構えから相手の動きをうかがう平野(写真は剣道部より提供)


―上段の構えにして良かったと思いますか。

「もちろんです。今までの中段の構えでしたら、今の自分はいません。全国で戦うどころか、専大にすら入学していなかったかもしれません。上段の構えにして本当によかったです。構えを変えることを勧めてくれた当時の先生には感謝の気持ちしかありません」


―剣道という競技はどんなところがおもしろいと思いますか。

「他のスポーツと違って、心の部分で結果が大きく左右されるところですね。剣道は、目には見えない心の部分の勝負があります。もっと上のランクにいけば両者の実力差がそのまま結果に出ますが、学生のうちはお互い精神的に未熟な部分があると思うので、そこで差が出たり、結果が変わったりすることがあります」


―将来の夢や目標などはありますか。

「将来は警察官として剣道を専門的に極めたいと思っています。もっと上達して、いつかは日本代表の選手になりたいですね。それが今まで指導してくれた先生や、支えてくれた親に対しての恩返しであり、感謝の表れだと思いますから」


 高校時代の大きな決断と惜しみない努力が全日本という大舞台でついに実を結んだ平野。これからの目標は今年の10月に行われる団体戦の全国大会で専大を日本一に導くことだ。

(飛田翼・文3)