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専大卓球部での在籍4年間で数々の栄冠を手にした出澤杏佳(文4・大成女子高)がついに卒業を迎える。1年次から遺憾なく実力を発揮し、チームの中心役を担い続けてきた大黒柱。 部に所属しながらプロチーム(Tリーグ)の試合にも出場を重ねたほか、世界各国のリーグ戦にも出場して好成績を収めるなど、学内外で多くの活躍を果たした。そんな出澤の大学4年間を2回に分けて振り返る。
※前記事の【前編】からの続きになります。
▲4年間に幕を下ろす大エース・出澤
〇「一番思い出深い」 悔しさ糧に大飛躍の3年目
・高いレベルを得る契機
新たな決意を持ち、学生活動の後半に突入した3年次。「(4年間で)1番思い出に残っている」とこの年、大飛躍を果たす1年を迎える。
2023年8月に中国で行われた「学生のオリンピック」と呼ばれるFISU夏季ワールドユニバーシティゲームズにて日本代表メンバーとして出場。シングルスと団体で銀メダル、混合ダブルスで銅メダルと全種目でメダルを獲得するという大車輪の活躍を見せた。大学生になって初の国際大会での好結果に「すごく自信を持てたし、世界で結果を残せるようになりたいと思えるようになった」と大満足だった。大きな手応えを掴み、よりハイレベルを目指すきっかけとなった。
▲大学生となって初めての国際大会でメダル3つを獲得する大活躍。自信を深める大きなきっかけになった
・「この日のために」 やってきた雪辱の舞台
そして迎えた10月の個人戦の全国大会。1年前の雪辱を果たす舞台がやってきた。スーパーシードとして確実に白星を重ね決勝へ進出し、相手は1年生選手でルーキーならではの勢いを持っていた。試合は両者互角の点の取り合いとなり、最後まで決着が分からない大熱戦。一時セットカウント2-2と同点になったがこれまでの経験値と高い集中力を活かし、4-2で振り切った。
見事に1年前の屈辱を晴らし、大学へ進学して悲願の日本一を獲得した。決意して取り組んできた「徹底した準備」が実を結び、当時のインタビューでは「できることを考えて、全部実行しようとやってきた。『自分のできること全てやってでも、負けたのだったら仕方ない』という考え方を持つようになった」と語っていた。
学生頂点の栄冠を手にしたエースの勢いは全く止まることはなかった。翌月の11月に行われた学生選抜選手権でも見事に優勝を果たした。全国区の大会で連続して頂点に立ち、王者の貫禄を見せつけた。
▲見事に昨大会の雪辱を果たした2023年の全日学。決勝で勝利の瞬間は涙が込み上げた
2年次の敗戦を糧に心身ともに大きく成長し、タイトルを総なめした3年次。個人戦において充実したままシーズンを閉じた。
〇充実感溢れるラストイヤー 「とにかく濃かった1年」
・「自分の経験のために」 チームの引っ張る役へ
ルーキーの頃から専大の核を担ってきた強者もついに最上級生となった。4年次を「とにかく濃かった、充実していた1年だった」と振り返った。
3年次の終わり際、加藤充生樹監督から「キャプテンをやってみないか」と話を持ち出された。これまでリーダー役に就いたことはなかったが「これから先の自分のために、経験としてやろうと思った」と就任を決意した。結果的に「やって良かったと思う。役職に就く人の気持ちがよくわかったし、そのために取る行動も見つかった」とまた一つ成長する機会になった。
すると「行動で引っ張っていくキャプテン」という理想像を見事に体現し、チームの春秋のリーグ戦連覇、夏の団体戦インカレ準優勝と数々の快挙に大きく貢献した。
▲1枚目から春のリーグ戦、夏のインカレ、秋のリーグ戦連覇達成。最終学年で主将を任され、より一層増した存在感でチームを引っ張った。
・「刺激的だった」 大幅に増加した海外経験
また、自身の技術面でも「刺激的だった」という1年。部活の試合に加えてTリーグや世界大会に参加し、ハイレベルな環境に身を置く機会が増加した。特に大きかったのが夏に行われたパリ五輪。アシスタントとして日本代表メンバーに同行し、練習相手やマネージャーを務めた。出澤特有の不規則な球が外国人選手の特徴と似ているという理由から選ばれたという。「すごく良い経験をさせてもらった。(試合を見学し)世界最高峰のレベルがどれくらいなのか、自分はまだまだだなということがよくわかった。めちゃくちゃ刺激的だった」と極めて貴重な経験となった。
夏が明け、秋シーズンからは自らの世界ランキングを上げるために世界各国へ遠征に向かった。すると初参戦となった11月のWTT(WorldTableTennis)フィーダーシリーズのポルトガル大会でいきなり優勝という大快挙を達成。これまで積み上げた経験値をしっかりと世界の舞台で披露して見せた。ランキングも100位台と急上昇させ、文句の付けようがない結果を残した。
▲2024年11月に初参加したWTTではいきなり優勝を果たすという快挙を達成。自信をより深めた
このような海外の試合に参加する際にあたって同行者は無し。移動手段はもちろん、食事や練習場所・相手など全て自分で準備をしなければならない。この大会も移動費、参加費は全て自分で集めて参加した。当時のインタビューでは「大きな決断をして臨んだ大会だったので優勝の達成感は格別だった」と声を弾ませていた。
今年の2月にも再度WTTに参加し、海外経験を増やした。そんな単身遠征について、「環境が一変する中でどれだけパフォーマンスを出せるか。全て自分でやらないといけないから、セルフマネジメントっていうのがすごく身についた」とより高いレベルで求められる力を得ることになった。
▲世界での試合を大きく増やした4年次。一人で全てを管理する経験は貴重なものとなった
そうして力をより一層伸ばすこととなった最終年。チーム戦では春秋のリーグ戦優勝、インカレ準優勝、個人戦では関東学生選手権優勝(ダブルスも優勝)、インカレは2年連続優勝(ダブルスは3位)と学生大会におけるタイトルを全て上位で獲得。まさに圧倒的な活躍だった。
〇「自分にすごく合っている」 縁ある実業団へ
大学時代に別れを告げ、活躍の舞台を社会人に移す。進むチーム先は実業団の名門・レゾナックスホールディングス。練習拠点は自身の出身に近い日立市で中学の時に練習会に参加していたという縁がある。「卓球に集中できる環境がとても整っているのと、地元ということもあって。自分にすごく合ってると思った」と迷いなく決めた。生まれ育った地に戻り、活躍で恩を返していくつもりだ。
▲大学卒業後は実業団チームへ進む。小さい頃から親しみのあるチームで、他の選択肢はほぼなかったという
○今後の理想 「とにかく上を目指し続ける」
掲げる今後の目標についてはこう語った。「日本代表に選ばれて、世界選手権で活躍出来る選手になりたいという思いはある。ただ、自分は”できる限界までやってどこまでいけるか”っていう考え方のほうがプレッシャーにならなくて良い。だから具体的では無いけど、とにかくどんどん上のレベルを目指していくっていうことでやりたい」。一つ一つの結果に満足せず、常に高みを目指していく姿勢を理想とした。
最後に、「大学での様々な出会いは本当に貴重な財産になった。それを活かしながら、良い結果を残せるように毎日努力していきたい」と言葉に力を込めた。専大の4年間で多岐にわたる栄冠を手に入れ、ひと回りもふた回りも成長した最強プレーヤー。培った数々の経験を糧に、次なるステージへ羽ばたいていく。
▲数々の栄光に輝いた4年間。積み上げた経験を次に活かしてみせる
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いでさわ きょうか(文学部・4年)
茨城県ひたちなか市出身
2002年6月28日生まれ B型
大阪・四天王寺中ー茨城県日立市立泉が丘中ー大成女子高校ー専修大学
Tリーグのトップおとめピンポンズ名古屋(2019〜2020年)、九州アスティーダ(2021年〜)に在籍
世界ランク:119位(2025年3月20日現在)
在学中の主な戦績:
○1年次
・関東学生新人選手権 女子シングルス 優勝
・関東学生選手権 女子シングルス 優勝
・全日本大学総合卓球選手権大会 女子ダブルス 準優勝
○2年次
・全日本大学総合卓球選手権大会 女子シングルス 準優勝
○3年次
・関東学生選手権 女子ダブルス シングルス 3位
・FISUワールドユニバーシティゲームズ 女子団体 銀メダル、女子シングルス 銀メダル、混合ダブルス 銅メダル
・全日本大学総合卓球選手権大会 女子シングルス 優勝
・全日本学生選抜卓球選手権大会 女子シングルス 優勝
○4年次
・関東学生選手権 シングルス、ダブルス 優勝
・全日本大学総合卓球選手権大会 (団体の部)
・全日本卓球選手権大会 混合ダブルス ベスト8(ランキング入り)
☆
座右の銘:人事を尽くして天命を待つ
卓球の良いところ:一筋縄ではいかないが、結果に繋がったら面白いところ
憧れの選手:何卓佳(中国人プレーヤー。自身とプレースタイルが近いため参考にしている)。
好きな食べ物:焼肉、チョコ、フルーツ。
文=河上明来海(文4)
写真=WTT提供、本人提供、河上