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〈第318回日本体育大学長距離競技会 12月1日=日体大競技場〉
1日に行われた日体大記録会の10000mに25名が出場。10組で専大から最多の14人が出走し、熾烈な駅伝メンバー争いを繰り広げた。予選会でメンバー外だった高橋凛琥(経営1・八千代松陰高)がチーム内で1着とアピールした。2着だった予選会メンバーの和田晴之(経営2・三浦学苑高)は実力を見せつけた。12組では駅伝主将・藁科健斗(経営3・横浜高)が自己記録の28分56秒23をマーク。自身初の28分台に乗り、駅伝前に自力を光らせた。15組では新井友裕(文3・浦和実業高)が10000m走でも専大日本人記録を更新。28分26秒95で8年振りに約5秒縮め、専大史上最速のエースへの道を着実に進んで行った。
▲11月10日の5000mに続き、10000mでも専大記録を樹立した
▲10組では専大勢最多の14人が出走し、駅伝メンバー選考に向けてアピール合戦を繰り広げた
○新井は5000mに続き、またも専大日本人記録樹立!
15組に出走した新井は、レース序盤から後方に位置取り、前方の様子をうかがう。徐々に集団が縦並びになり始めたが、先頭集団にしっかりと食らいつき、最終的に14着でフィニッシュ。28分26秒95を記録し、先日の5000mに続き、10000mでも専大日本人記録を塗り替えた。
▲日本人エースの実力で食らいついた
勢いを増す3年生エースは「今回は28分30秒を目標にレースを進めて、それを切ることができたので、まずはホッとしている」と振り返った。残り2周の時点で体力に余裕がある様子を見せていたが、「呼吸的にはかなり余裕があったが、(先日行われた日体大記録会の)5000mが終わってから練習を積めなかったので、足が耐え切れなくてラストはそんなに上がらなかった」と納得のいく練習ができていなかったことを明かした。
それでも、持ち前の勝負強さで丸山竜也選手(平29・商卒)が持っていた専大日本人記録を更新。新井は「(記録更新は)本当は4年目に達成すると立てた目標だったが、それを1年早く達成できたので、かなり自信になっている」と笑顔で話した。次々と専大記録を樹立しているだけに、エースにかかる期待は増す一方だが、「自分は期待されている方が逆にタイムが出るとか、状態も良くなるので。そこはもう期待してほしい」と意気込んだ。
好調を維持する新井について長谷川淳監督は「100周年という部の歴史の中で、今、実業団で活躍している選手たちが作った記録を更新してくれた。そういった意味では彼自身のこれからの活躍が本当に私としても期待ができるし、大学を卒業してからもそういうプロとか実業団で活躍していける選手だと思った」と高く評価した。
▲専大史上トップランナーへと更なる高みを目指す
○ルーキー高橋が全日本予選以来の10000mで好走
10組に出走した高橋は、6月の全日本予選以来の10000m出場となったが、箱根駅伝メンバー入りに向けて好走を見せた。全日本予選では初めての10000mということもあって終始苦しいレース展開となったが、今回のレースでは序盤から先頭集団に付けると、一時はトップに躍り出るなど、安定した走りで専大勢トップの2着となり、29分13秒16の自己新記録を更新。ルーキーは「外の気温はすごく良くて、練習もしっかりできていたので、28分台は絶対狙えるし、ミスっても29分15は切れるなと思っていたので、最低限のタイムは出せた」と振り返った。
▲レースの後半で一時、組の先頭に立つ
高橋は箱根予選会ではメンバー外となったが、同期の田口萩太(文1・東京高)らの走りを走路員として間近で見届けた。自分が走れない悔しさと同時に「やっぱり負けてらんねえなと思って、そこで火がついた」と話す。悔しさを糧に練習に励み、今回のレースでは、同じ組に入った田口を上回って見せた。しかし、高橋は結果に一喜一憂せず、「今日は勝ったが、1年生全体で結構良いタイムになっていたので、4年間、チーム全体で良いところ狙っていきたい」としっかりと先を見据えた。
箱根路では6区を希望する高橋。「本当は1区を走りたいが、夏合宿では全然走れていない。走力で劣っていても下りなので、スピードに乗っていければ走れる区間なので」と理由を明かし、「まず28分台を絶対狙う。6月の全日本予選でミスっているので、来年しっかり走って全日本にチームで出場する。箱根もシード権に行きたい」とリベンジを誓った。
長谷川監督は「高橋はこういう試合に強い選手で、今回もかなりコンディションは良かったので、良い記録で走れるのかなとは思っていた。少しスローペースになった組の中で、良いところに付けて最後も勝ち切っているので、1年生の中でもサプライズというか、良い影響を与えてくれた」と話した。
▲予選会メンバー外だった悔しさをバネに、本戦メンバー選考へアピールした
〇予選会出場組の和田もアピール 自身の鍵は足のケア
10組でチーム内の着順を重視してレースに挑んだ和田はチーム内2番でフィニッシュ。29分13秒59と自身が持つ記録を約27秒更新した。「自分の組は14人専大生がいて、その中から一部のメンバーは選ばれるので、それも分かってた上で着順を自分は絶対取ろうと思っていた。後輩(=高橋凛琥)に負けたのは悔しいが、2番っていう結果に少しほっとしている」と予選会メンバーに選ばれた実力を発揮した。
▲予選会メンバーに選ばれた実力を見せつけた
予選会後、和田は1、2週間ほど左の太ももを痛めてしまった。本戦に向けてもう一段階力をつけていくことを予定していたが、それが儘ならない状態だった。
だが、本戦のメンバー選考がかかっている今回の記録会に向けて急ピッチで調整をした。「予選会が100だとして50まで下がってしまったが、今100くらいまで上がってこれて戻せた」。こうして短期間で復活できた要因は大桃結花トレーナーの治療など足のケアを徹底させたことにあるという。和田は1,2週に一度、大桃トレーナーから個別に治療を受けている。そのおかげで今年は大きな怪我することが無かった。
和田は自身の強みを「今年に入って怪我が少なく出る試合で大きく外していないと思う。ポイント練習や合宿といった練習でも大外しするということはなかった。予選会ではチーム内6番で走って、今回も同じ組では2番で走っているという安定しているところが強みなのかなと思う」と語った。
長谷川監督は和田の走りを「予選会が終わってから少し(調子を)落としてこの記録会に合わせてきたが、非常に調子もよくできて調整も上手くいった。ある程度しっかり走れるというのはあったので、予想通り走ってくれた」と評した。「予選会走らせてもらって、自分のタイムがチームに反映されて突破できたという自分たちの力でいけたというのが嬉しかった。本戦は絶対今年出たいと思っていて、出るからには結果を残したいというのがどんなレースでも思っているので、出るからには1秒でも早く襷を渡せるような練習を積んでいきたい」と本戦への熱意が籠った。
▲本戦への熱意が籠る力走を繰り広げた
〇28分の大台に乗った藁科 駅伝主将の意地を見せつける
駅伝主将を務める藁科は12組に出走。28分台を目標に力走を繰り広げ、28分56秒23の自己記録で達成した。昨年11月26日の記録会では29分00秒89とわずかながら28分台に乗せることができなかった。「去年28分台出せなかったっていうことがありそこを超えたいと思っていたので、1年越しにリベンジができたと思う」と昨年の悔しさを晴らした。
▲昨年11月26日 の記録会でわずかながら届かなかった28分台の壁を乗り越えた
大躍進の予選会から約1か月半。チーム内では本戦出場メンバー争いが熾烈化していることを藁科も感じている。「箱根に向けの動きがチーム全体としてあった。(予選会で)走ったメンバー、走ってないメンバーというところが、箱根のメンバー争いのチーム内競争が激しくなったというか、際立ってきたというか。予選から走らなかったメンバーが本戦で走ってやろうという下からの突き上げがやっぱり大きくなって、そこに(予選会出場)メンバーも負けてはいけないというある意味相乗効果になってきて、やっぱチーム内で良い競争ができてるのかなという風には思う」。
しかし、予選会後の藁科は快調ではなかった。それでも予選会に出場した意地を見せつけ、今回のレースで28分台の大台に乗った。長谷川監督からは「少し貧血気味なところもありそんなに練習が順調にやれていたわけではなかったが、コンディションと組の良いペースにはまって、非常に上手いレースをしたと思う」と藁科の器用さを評価した。
地元神奈川で行われる本戦。藁科は県内の区間である4,7,9区での出走を望んでいる。
痛悔な思いを経験したレースから1年。下馬評を覆す大躍進で今年は予選会2位を勝ち取った。本戦でも専大の下克上が期待される。「昨年は落ちてしまって今年は2番通過したというところで、やっぱりチームとしても箱根駅伝を目指してやってきていた。その中でもシード権というところを目指すことになってくると思うので、しっかりとチーム一丸となってシード権へ挑戦していくというところをやっていきたい」と駅伝主将としての覚悟を決めた。
▲駅伝主将は本戦に向けて走り出す
〇駅伝メンバー選考で嬉しい悩み 「1つ上のステージに行く良いきっかけ」
今回のレースでは予選会メンバーだけでなく、出場することが叶わなかった選手たちも健闘した。長谷川監督は「メンバー選考の意味合いも込めて、ある程度同じ組で走ってもらったが、予選会を走った選手たち、 他の選手たちも非常に頑張ってくれた。上位でゴールした選手もいたので、 その点に関して言えば嬉しいところがある。メンバー選考というところで言うと、良い意味で悩むことがこれからあるなというか、こちらもしっかり考えなくてはいけないと思った」と嬉しい悩みを明かした。
予選会から1か月半が経った。駅伝に向けて専大は選手層を厚くすることが課題である。長谷川監督は「他の予選会走っていないメンバーにも(駅伝で走る)可能性が出てきて、皆、駅伝で走りたいと思っている。そういったところでチーム内の競争意識というのは非常に高くなり、練習の質も上がった。今日も予選会で走ったメンバー以外もしっかりタイムを出してくれたので、非常にチームとしては1つ上のステージに行く良いきっかけができているかなと思う」とチームがレベルアップしてきているのを感じている。その上で「うちは今年の春先から選手層の底上げがテーマであって、今回の記録会で選手層は少し上がった形にはなっているが、他の大学さんのタイムもかなり上がってる中では、大学としてのタイムの位置取りはそんなに変わってないと思う。そこに関して言えば、来春4月の記録会等でもう1段階上げていかなければならない。予選会を通過して本選で戦うという大学の水準ではまだないのかなと思うので、形にはなりましたけど、まだまだそこに関しては意欲を持ってやりたい」とこれからのチームの成長を見据えた。
文=門前咲良(文2)、竹田一爽(文3)
写真=久保歌音(人間科学2) 、竹田