最新ニュース
<令和6年度東都大学野球秋季リーグ戦=10月29日 UDトラックス上尾スタジアム 専大 9ー6 拓大>
優勝の可能性が目の前で閉ざされても、最後まで意地を見せつけた。
大混戦を極めた2024年秋の東都二部。シーズン最終日となったこの日の時点でもなお、優勝の可能性は東洋大・駒大・専大の3校に残されていた。専大の優勝条件は「第一試合の駒大対東洋大で駒大が勝った上で、第二試合に専大が勝利」のみ。見守ることしかできない。
第一試合は今季の東都二部を象徴するかのような死闘で、駒大2点リードで迎えた9回裏、東洋大が2本の本塁打を放ち土壇場で追いつくと、タイブレークに突入した延長10回は互いに無得点。張り詰めた空気の中、11回表も東洋大が0点に抑えると、その裏に均衡が破れた。三つ巴の混戦は、東洋大が自らの手で優勝を勝ち取った。
「他力だったので。いろいろな思いがありますけど、やっぱり優勝は自力でしたかった」。第一試合を目の当たりにして、主将・小柴滉樹(経営4・佼成学園高)は悔しさを顕にした。それでも「最終戦に入る気持ちは難しかった中で、最後に頑張ろうとみんなで言っていた。最後まで頑張れたのは大きかった」と堂々たる姿で戦い抜いた。齋藤正直監督は「張り詰めた感じが試合前に少し抜けてしまった。その中でも、勝ち点4を取ろうという矜持をしっかりと持って頑張ってくれた」と、選手たちの姿勢を評価した。
▲小柴はこの試合2安打
“チーム小柴”4年生にとっての最終戦、先発を託されたエース・肥沼竣(商4・加藤学園高)は初回、拓大打線に捕まり3失点。春の覚醒から秋前半の不調を乗り越え、この一年「18」を背負って投げ続けた男のラストマウンドは悔しい結果に終わった。
▲「18」は受け継がれる
試合前から続く重苦しい空気を打ち破ったのは、今年の打線を象徴する二人だった。
4回1死一塁の場面で中野拳志郎(文3・小浜高)がレフトへ高々と打ち上げた打球はフェンスを越えて反撃の2ランに。今春の打撃開眼から秋は全試合スタメン出場を果たし、名実ともに正捕手を掴み取った。飛躍の年の最後に飛び出したリーグ戦初本塁打は、来季のチームの柱となることを予感させる一発となった。「今日の勝ちが3年生以下に繋がるように。特に中野には響いていると思うよ」と指揮官も期待を寄せる。
▲4年生投手陣からの信頼も厚かった中野
打線は勢いづき、2死満塁のチャンスで3番・西里颯(経済4・興南高)。副キャプテンと「4番・一塁手」を背負ってスタートした一年。打順は変われど、大黒柱には常に好機で打席が巡ってきた。「これが最後の試合。悔いを残したくなかった」と覚悟を決めて振り抜いた打球は左中間を切り裂く弾丸ライナーでそのままスタンドへ。
▲一振りで決めた
確信の逆転満塁弾はなんと2試合連続のグランドスラム。「まさか今日も満塁ホームランを打てるとは思わなかった。でもこうやって繋いでくれたみんなのおかげで自分に回ってきたので。チャンスで打てたというのは本当に良かった」と、仲間への感謝を忘れなかった。
▲生還後小柴キャプテンとハイタッチ
今季15試合で3本塁打、15打点はいずれもリーグトップ(連盟表彰はなし)。背負うものも大きかったラストシーズンで、文句なしの成績を叩き出した。一年秋から遊撃を守り、常にオーダーに名を連ねた背番号8。3年時には不調で苦しんだものの、周囲の期待は変わらなかった。「自分は1年生の頃から出させてもらって、結果が出ずに辛いことの方が多かった。それでも使ってくれた監督や支えてくれたチームメイトには感謝の気持ちでいっぱいなので、最後にああいう形で結果が出せて本当に良かった」。4年間で入替戦含む84試合に出場、65本のヒットを積み重ねた男の最後は晴れやかな表情だった。
▲2年前の入替戦にもスタメンで出場 当時は「2番・遊撃手」
5回には作本想真(経営4・大村工高)がレフトスタンド後方の林へ消える特大の一発を放ち引き離した。「やっと最後の最後に覚醒してきた」(齋藤監督)と皆が待ち望んだ大砲の一撃などで、結果的に9点を奪って逃げ切った。
▲直近5試合で15打数7安打6打点2本塁打の大爆発。大器は最終盤に花開いた
投手陣は肥沼の後を田中誠央(経営4・高岡一高)、西村卓真(経営4・専大松戸高)、平田健眞(経営4・専大松戸高)、奥村開(経済4・福井商高)、秋田駿樹(経済4・広島新庄高)の4年生投手リレーが大雨の苦しい環境下で27個のアウトを積み重ね、ラストゲームを締め括った。
▲最後のアウトは秋田の奪三振だった
春は13試合、秋は最大15試合を戦い抜いた”チーム小柴”。指揮官は「チームの中で指摘をしてくれる。みんなが同じ方向を向くというように、ベクトルを同じにしてくれた」と主将に最大限の評価を送り続けた。小柴自身は「言いやすい環境をみんなが作ってくれたのが大きかった。環境に助けられた」と謙遜するが、その姿勢が周りに好影響を与えたのは言うまでもなく「本当に良いチームが作れた。4年生中心に、下級生もやりやすい環境が作れたのは大きかった」と在るべきチームの姿を作り上げた。後輩に向けては「この気持ちを忘れずに。優勝して一部に上がってほしい。一部でもタイトルが取れるような選手たちもいる。とにかく昇格して、活躍してほしい」と期待する。
▲勝ち点4を掴み取った選手たち
「本当にここまで頑張ってきて良かった。専修大学の野球部としてここまで活動できて良かった。それだけです」。背番号1は堂々たる姿で大学野球のグラウンドを後にした。
チームを支え続けた主務・黒沼優太(経済4・山形南)
ーーどんな4年間だったか
「長いようで短い4年間。密度の濃い時間でした」
ーー第3戦の先攻後攻を決めるじゃんけんは3連勝で終えた
「気づいたら強くなっていて(笑)。監督からアドバイスをもらったので。駒大戦の日に監督から『これで行け』と言われて勝てた。そこから勢いに乗っていけた。監督のおかげです」
ーー今年はどんなチームだったか
「過去にないくらいまとまっているチームだった。個々の能力というよりはチーム力。そこで言えば一番だった。一人一人の繋がりというので、ここまで来れたと思います」
ーー4年間を振り返って最後に一言
「最高です」
文=萩原健丸(経営3)
写真=大石真碧(文1)