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<令和6年度東都大学野球春季リーグ戦=5月27日 等々力球場 専大0-1国士舘大>
▲開始早々の被弾に歯を食いしばる肥沼。
試合開始のサイレンが鳴ってからすぐのことだった。ナインたちは、ただ曇天の上に描かれたアーチを見送ることしかできず。不運にも、この1本が勝負を決定づけた。
5月2日ぶりとなる国士舘大戦。エース肥沼竣(商4・加藤学園高)は、普段通りマウンドに登場した。1番・染谷真ノ介選手に投じた2球目。インコースに甘く入ったスライダーが仕留められ、左越え本塁打に。それは強風に抗いもせず、スタンドのポール際に落ちた。先頭打者に被弾を浴びたものの、これ以降は無失点に抑え最終回まで投げ切きった。
踏ん張りを見せるエースに対し打線の援護は及ばず、誰ひとりホームベースを踏むことはなかった。9回裏、2死から6番・中野拳志郎(文3・小浜高)が2塁打を放ち、一度に好機を迎えたが得点には至らない。中野の代走を任された苅部力翔(経営3・専大松戸)が7番・谷頭太斗(経済2・日本航空石川)の投ゴロに飛び出してしまう。挟殺プレーに持ち込まれ、リタッチアウトされた。その後、後続が繋がり再び2死1、2塁の絶好の機会を迎える。ここで代打に送られたのは作本想真(経営4・大村工業)。大型打者に逆転の一打を祈ったが、サヨナラヒットが芽吹くことはなかった。
▲レフト戦に引っ張った中野の打球は二塁打に。
▲代走の苅部は、勝負どころで挟まれてしまった。
▲重局面を託された作本は三振に倒れ、試合終了。
思いがけず気を許した失投が勝負の明暗を分けた。背番号18は、投げた瞬間に「抜けたと思った」と率直な心境を明かす。ブルペンから調子が上がらず「初回から苦しい状態が続き、自分が軸としている真っ直ぐが、いまいち良くなかった」と反省。だが「真っすぐが無理だったので、自分なりに変化球などで勝負できたことは良かった」と言う。配球をスイッチし、2回以降の好投を演出した。この内容を踏まえて「45点くらい」と自己評価する。また投球動作をクイックに変更し「そこから結構バランス良く投げられた。最低限の自分の投球はできたという感じ」と徐々に立て直していた。回を重ねながら試行錯誤し、結果6つの三振を生み出した。
今季の最終戦をチームは持ち越す形となった。右腕は「やっぱり、このチームは全員野球。みんなで支えて最後、勝ち点にできればと思う」と必ずや勝利を誓う。「自分のやるべきことはゲームを作ることなので、そこを突き詰めていきたい」。先発となれば次こそはと、固い意志を見せた。
▲初回以降は、0を並べ続けた。
10得点を挙げた1回戦に比べ、打線はあまりに大人しかった。主将の小柴滉樹(経営4・佼成学園高)は全体を通して「左ピッチャーが打てていないという課題がずっと上がっていて、技巧派にやられている」と苦手分野に目を向ける。「後半にかけて、みんな打てていない意識が出てしまうと、打とうとしても力んでしまう」「もっと思い切っていかせれば、みんな打てると思うので、もう一つ羽を伸ばしてやらせてあげたい」とチームに対する思いを溢した。この日、逃してしまった勝ち点については「勝つしかない。3点で終わるか2点で終わるかで全然違う」とことの重要さについて話す。最後は「リーグ戦を通じて成長していることを実感しているので、とにかく次の試合こそ、しっかり打って終わりたい」と、なんとしてでも勝ってみせる。その思いがキャプテンの言葉には何より強く宿っていた。
僅差で終えた敗戦により、今季の最終戦は次戦にお預けとなった。もう、泣きの一回があることはない。良い形で秋のリーグ戦へと繋げるため、勝ち点3点目を懸けた一戦に全身全霊で挑む。
▲バックから盛り立てる小柴主将。
▲中野は4回表にも2塁打を放っていた。
[中野]
――2ベース2本を振り返って、バッティングの調子はどうだった?
「疲れは溜まっていたけれど、狙っていた球を仕留められたので良かった」。
――バッテリーとして、肥沼の立ち上がりの印象は?
「今日は全然、真っ直ぐが走っていなかったが変化球が良く決まっていた。スライダーの曲がりが良かった」。
――これまでの試合と比較して、エースへの評価は?
「まだまだいけるとは思う。だが、風もあったし悪いなりに頑張っていた」。
――次戦への意気込みは?
「勝つこと、勝って終わりたい」。
――2部リーグ打撃成績5位だが、どう感じている?
「3割5分残せたらいいと思う」。
▲肥沼、中野バッテリ―。
文=小山明香(文3)
写真=増田美海(文4)