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2023.12.27
陸上競技

【陸上競技部】「選手に信頼されるように」チームを支えた女性主務・田島くるみ

専大陸上競技部としては珍しい、女性の主務としてチームを支えてきたマネージャーの田島くるみ(経営4・専大附)。3年次の1月に主務に就任してからおよそ1年間、チームの統括役を務めてきたそんな田島の4年間に迫る。

▲女性の主務としてチームを支えてきた田島


〇マネージャー入部

 田島は中学から陸上競技を始め、高校まで棒高跳びを種目としていた体育会系女子。高校3年生の際、目標としていた記録を突破できず、「納得した高校生活ではなかった」と悔いが残った。そこで進路を考えた先、附属の専大が箱根駅伝予選会に出ていることなどを知り「自分の中で納得して陸上を終わらせたい」とマネージャーになることを決めて入学。

心を躍らせて入部するも、同期のマネージャーは自身のみ。「男子ばかりできつかった」と居場所がない感じがあったが、先輩たちに優しく支えられ馴染んでいった。「自分がいやすいようにしてくれた」と感謝している。忘れられないのは1年次の夏合宿。「練習終わりに全員の前でいきなり『監督からなにか喋れ』って言われて。選手と経験が違うから、自分の意見を言うことに抵抗があった」。もともと自分自身は「人前で喋るのが苦手なタイプ」と控え目な性格で、1、2年次は先輩たちについていくような存在だった。

▲主務に就いてから人前で話すことは慣れたが、もともと控えめな性格。1.2年次は先輩たちの影に隠れていた


〇チームの今後を考え生まれた覚悟

 転機となったのは3年次。先輩が抜けて誰が次の主務になるのか。とふと考えた。同期は田島以外全員プレーヤーであり、学生コーチという存在もいなかった。様々な思考をめぐらせて、同期の数人にも相談し覚悟を決めた。「次は私しかいないから、やってもいいかな」。気持ちの勢いそのままに、監督を寮のエントランスに呼び出して自身の考えを伝えた。正式に決定はしなかったが、承諾。監督に続いてコーチ陣やトレーナーにも順次伝えていった。そして2ヶ月後の夏合宿。学年のミーティングの際に同期を見ていて思った。「結果を出してくれそうな感じがした。同期のみんなのために頑張りたい」。自身の想いを周囲に伝えるとゴーサインが出され、より一層主務になることへの覚悟が強まった。

▲自分自身で覚悟を決め、役職に就くことを決意


〇主務就任。しかし…

 そして3年生の1月。箱根駅伝が終わり、新体制が発足。正式に陸上競技部の主務に就任した。いざ就任すると「チームの1番上に立って背負っている感じ。人のせいにできない立場になったというところが1番強かった」と身が引き締まった。しかし、2週間後に行われた同学年のミーティングで挫折感を味わった。多くの選手から就任したことに批判を受けた。「今までずっと男子がやってきたよ」「寮に入れない」「朝練に来られない」 「本当にやっていけるのか」。様々な意見の矢が一斉に自身に刺さってきた。「(正直)びっくりした。こんなに言われるのか…みたいな」と思い返す。 さらに人伝えで批判や文句を耳にし「私で良かったのかな」と思うようになり、辞めることも何度も迷うこともあった。しかし、「私しかやる人いないよな。監督にも言っちゃったし」と引き返せない状況に、自らに言い聞かせていた。そんな辛い状況を打開したのは後輩の渡辺凛(経営3・名古屋経大高蔵)だった。その月の終わりに渡邊のマネージャー就任が決まり、チームは落ち着いた。「本人は色々な感情があったと思うけど、あの時はすごく助かった」と感謝した。

その後、同期たちの理解も深まり春に4年生となってから不満を言われることもなくなった。「ありがとう」と感謝されることも増え、最後まで主務としてやりきった。

▲同期から就任直後は批判を受けたが、その後は理解されるようになり、最後は笑顔で終えた



〇散ってしまった箱根路の夢

入学してから3年間は箱根駅伝に出続けてきたが、ラストイヤーはそれが叶わず。「箱根でみんなを走らせてあげたかった」「車から走っているのを後ろから見たかった」と悔しい気持ちもあるが、やりきった充実感の方が大きいという。4年間、チームを俯瞰する立場として、箱根に出るチームになったと感じるようになったと話す。「年々出るようになって周りから注目されるようになって見られる自覚が出てきた。専大っていう名前を背負っているような」。さらに、「選手たちは頼もしく、背中がたくましくなった。練習で後輩を引っ張る姿勢も増えた」と年を重ねるごとに同期の成長ぶりに目を細めていた。

▲10月の駅伝予選会後、全体の前で話す。寮に戻ってから「本当に出れないんだ」と実感が湧き、涙が止まらなかった


〇後輩との関わり

役職につき、同じ立場の後輩マネージャーたちにも意識したことがある。「自信をもって伝えないとついてこないこと。言い方1つとっても『ーだと思う、たぶん〜』ではなく言い切るようにする。自信の無さが伝わっちゃうのはダメだと思った」と細かい部分まで気を遣った。

また、これからを担う後輩たちにはこう語った。「自分の意見をしっかり言えるようになって欲しい。まだ下級生だけど、1人1人自分の意見をもってそれを言葉にできるようになって欲しい」と願う。さらに選手だけでなくマネージャーも話し合いをしてみることを提案。「チームのことについて話合えるようになって欲しいと思う」と語った。

▲最上級生として、後輩を引っ張っていく自覚があった


〇役目を終えて

田島は主務の役割を担ったことを「良かったと思う」と振り返る。「普通の学生生活をしていては経験できなかったことがたくさんあるし、人として成長できた場だと思う」。人前で話すのが苦手だった自身だが、前に出て堂々としなくてはいけない立場になった以上、全体の前で話す場面が増えた。始めは抵抗や緊張もあったが、「やっと前に立って喋れるようになった」と話す。

さらにマネージャーとしてのやりがいは、同期が良い記録を出した瞬間。「嬉しいし、自分も頑張ろうと思える。選手たちがあんなに頑張っているから、私も頑張らないと」と選手の記録更新が日々のモチベーションになった。さらに周囲から頼られるようになったことも自身の嬉しさを感じる要因となり「認められるようになった感じ」とはにかむ。チームを支える立場として様々な頼み事をされるのは信頼の証だった。

▲選手たちが記録を出すことが自身のモチベーションにもなった



 チームを支える立場として選手と同様、駆け抜けてきた4年間。人として一回りも二回りも成長し、納得して引退を迎えた。この4年間で得たものを財産に、今後羽ばたいていく。

▲4年間で得た財産を今後の人生につなげる


文=河上 明来海(文3)

写真=陸上競技部提供、相川直輝(文4)、河上



ーーーーーーーーーーーー記事掲載以外の部分ーーーーーーーーーーーー

〇マネージャーの主な仕事

普段は週5回の活動で選手のタイム測定や水分供給、監督と連絡のやり取り。それに加えて主務であれば、試合のスケジュール管理や練習前にメニューを全体の前で伝達、外部との窓口役(取材やトレーナー、OBの来訪調整など)という仕事がつく。特に合宿といった長期練習の際は監督と話あってスタートやゴールを決める場合もあるという。

▲夏合宿時、全体の前でメニューを伝える

〇4年間で最もお世話になったのは田島洸樹(経営4・学法石川)主将だそう。主将と主務というチームの先頭に立っていく立場であったため、「チームの今後のあり方を話したり相談したりすることは多かった」と話す。

▲11/26日の日体大記録会で主将・田島のレース後に寄り添った主務・田島


〇個人的に注目する選手

それは2年生の新井友裕(文2・浦和実業)だそう。「なんかすごい『爆発力』を秘めている。ギャップがあるというか。練習や朝練は全然走れないんですけど、いざ本番になるとすごい結果を出すんです」と期待を寄せている。今年の予選会でもチーム2位の好走を見せ、先日の世田谷記録会では10000mで28分台を突破した。ちなみに走ること以外では「絆創膏も自分で貼れないくらいなんですよ(笑) それなのにあんな結果を出すから…」と微笑んだ。

▲田島が期待を寄せる新井。普段の時と試合で大記録を出すことのギャップに惹かれている