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〈第75回全日本大学バスケットボール選手権大会=12月17日 太田 専大48-50筑波大〉
▲最後の試合に敗れ、悔し涙を流す専大の選手たち。
有終の美を飾ることはできなかった。準決勝で東海大に1点差で敗れ、失意のまま3位決定戦に臨んだ専大は、筑波大に逆転負けを喫した。1点リードで第4Qに入ったが、冒頭で一気に8点を失い逆転を許す。序盤から両チームに重い雰囲気が漂う試合となったが、専大は最後まで重い空気を振り払えず、そのまま敗戦。4位でインカレを終え、赤嶺有奎主将(文4・豊見城)ら4年生を勝利で送り出すことはできなかった。
タイムアップのブザーが響くと同時に涙が溢れ出た。日本一の夢が破れ、最後に勝って終わることも叶わず、やりきれない悔しさがすべて涙になって表れた。点差にしてわずか2点。2戦続けての惜敗に、選手もスタッフも佐々木優一監督も悔し涙を流した。
▲試合終了直後のスティーブ。涙を堪えるように立ち尽くしていた。
第3Qまでは専大リードだった。しかし、第4Q冒頭で筑波大にエンジンがかかると、一気に4連続得点を許す。専大も重い雰囲気を破りたかったが、なかなか得点を伸ばせずギアを上げられない。一時1点差まで詰め寄ったが、48-50で試合終了。準決勝に続き僅差で涙を呑んだ。
「(モチベーションの維持は)すごく難しかったですね」(赤嶺主将)。目指していた日本一に届かなかった専大は、気持ちの整理がつかないまま3位決定戦を迎えていた。いつも通り試合に臨んだつもりだったが、複雑な気持ちと重苦しい雰囲気は隠し切れない。赤嶺主将はこの日スターター起用されたが、「本当に日本一を取るためだけにこの1年間戦ってきたので、その目標が叶わないってなったときに、チームとしても個人としてもなかなかその現実を受け入れられなかった」と、チームの雰囲気を変え切れなかった。
▲スターター起用された赤嶺主将は、コート内でもベンチからでも大きな声でチームを鼓舞し続けた。
クベマジョセフスティーブ(経営4・福岡第一)は、「いつも意識しているディフェンスとリバウンドは絶対に最後までやろうと思った」と、最後まで体を張り続けた。赤嶺主将とともに必死にチームを鼓舞したが勝利をもたらすことはできなかった。「最後勝つことができなくてめちゃくちゃ悔しかった」と、悔し涙が止まらなかった。
▲この日も攻守でチームを牽引したスティーブ。両チーム最多の16リバウンドを記録した。
下級生たちも涙が止まらなかった。淺野ケニー(経済3・洛南)はチームのギアが上がらない中でも「最後絶対シュート決めるから、今のいいプレーを続けてほしい」とコート上の選手たちを励まし続けた。声でチームを鼓舞する姿勢やプレーでチームを引っ張る姿からは、4年生たちへの想いがにじんでいた。「(4年生は)人数が少ないながらも僕たち未熟な3年生を引っ張ってくれた」と、勝利をもたらしたかったが、僅かに及ばなかった。「昨日の試合も最後アンソニーが頑張ってくれて、僕はパスを回すことしかできなかった」と自身のプレーに後悔も残った。「来年は自分がキャプテンにもなると思う。僕って支柱がブレなければチームは絶対にいい方向に向けるので頑張っていきたい」。4年生の想いも受け継ぎ、来年は自らの手で栄冠を掴むと誓った。
▲淺野はこの日11得点をマークし、チームを盛り立てようと懸命にプレーした。
▲スティーブとともに激しいディフェンスを見せる淺野。来年はスティーブから授かったキャプテンシーを存分に発揮する。
松野遥弥(経営2・桜丘)も、試合後しばらく顔を上げられなかった。「4年生は最後の試合だったので、赤嶺さんにもスティーブさんにも『笑顔!笑顔!』って言っていた。その中で自分は経験としてこの舞台に立たせてもらっているので、楽しむだけでじゃなくて何か吸収できるもののためにやっていた」。松野は今大会ゲームチェンジャーを任され、思い切りの良いプレーでチームに刺激を与え続けた。しかし、太田の地では流れを変え切れなかった。4年生を勝って送り出せなかった。4年生の顔を見ると自責の念が湧き上がり、涙を堪え切れなかった。「(来年は)自分とアンソニー(介川アンソニー翔・商1・開志国際)とジョベ(モハメド・商1・高知中央)がスタートでチームを引っ張っていくって話を優一さんがしてくれたので、今よりやらなきゃいけない」。この涙を糧に、来年以降のリベンジを誓った。
▲今大会強い存在感を放った松野。
▲悔し涙が止まらなかった松野。工藤太陽(経営4・福島東陵)、喜代永晃介学生コーチからも日本一の夢を託された。
佐々木監督は「やっぱり1つのディフェンスの緩みや1つのリバウンドなど、ちょっとした甘さが勝敗を分けた。絶対に負けたくないっていう気持ちをどれだけチームとして40分間続けられるかというところが足りなかった」とチームの課題を話す。今年は下級生が活躍する試合も多く、主力の多くが来年もチームに残る。「3年生は能力はあるけどまだ不安定なところもある。今の1年生や2年生ぐらいチームに勢いをつけられる存在になれると思うので、そこに期待したい」と、3年生の爆発に期待を込めた。
▲試合終了時にコートに立っていた3年生。左から齋達也(文3・東北学院)、市場脩斗(文3・市船橋)、淺野。
1年間チームを牽引した赤嶺有奎も「今の3年生はものすごく力のある選手が多くいる。みんなで協力して誰かのために何かをできる選手になれば、彼らなら必ず優勝できる」と期待を込める。「自分はここでバスケットは終わりという形になるんですけど、陰ながら彼らを応援したい」。4年生が果たせなかった夢は、3年生に託された。
文=野見山拓樹(文4)
写真=髙野葵葉(文2)