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▲チームの象徴の1人である淺野ケニー。1年前の悔しさを晴らすべく、強い思いでインカレに臨む。
第75回全国大学バスケットボール選手権大会(インカレ)が開幕。2回戦から登場する専大は8日、リーグ戦で敗れている中大と対戦する。昨年は3回戦で涙を呑み、中でも淺野ケニー(経済3・洛南)は最も強い悔しさを味わった。インカレの悔しさはインカレで晴らす。淺野は大会を前に専大スポーツの取材に応じ、意気込みを語った。(取材は11月30日に行いました)
2022年12月9日、日大戦。あの日の景色や熱、音、圧は、今でも淺野の脳裏に鮮明に焼き付いている。58-60で迎えた第4Qの残り0.2秒。淺野がフリースローを獲得すると、会場の緊迫感が一気に上がった。「フリースローを打つ前の会場は『これからどうなるのか』っていうすごい圧がかかっていた」。チームの命運は当時2年生だった淺野に託された。
シュート精度には定評があり、リーグ戦でも終盤の重要な場面でのフリースローは難なく決めていた。だが、淺野の感覚はわずかに狂い、放ったフリースローは2本ともリングを通らなかった。優勝候補だった専大は2点及ばず、3回戦で敗れ去った。
▲昨年のインカレで敗れた直後の淺野。
「僕が不安視していた外し方だった。その前に遠くのシュートを打っていて、(距離感が)合わなくて奥に当たるっていうのはずっと考えていた不安要素だった。あの雰囲気だから(外した)というわけではなかった」。喜びを爆発させる日大とは対照的に専大の選手たちは崩れ落ち、決められなかった背番号16はしばらく顔を上げられなかった。試合直後に淺野は「本当に申し訳ないし、最後4年生を勝たせてあげたかった」とコメントしている。
「フリースローの前に打っていたシュートを3ポイントで決めていれば、1本決めればよかったわけなので。その前のシュートのことをすごく考えていますね」と振り返る淺野。「東海にいた同学年の金近(廉・現千葉ジェッツ)は、インカレで優勝してそのままプロに行った。もし僕らが勝ち上がって東海に勝っていたらどうなっていたのか、とかは考えたりする」。あの日大戦に勝っていたら今よりもっと高い場所に自分はいたかもしれない。この1年、淺野はその悔しさと向き合った。
チームを引っ張った喜志永修斗(令5卒・現富山グラウジーズ)らが卒業し、チームの核だった米山ジャバ偉生(経営4・現富山グラウジーズ)が退部するなど、専大は大きな戦力ダウンが予想された。しかしチームの結束は一層強まり、春季トーナメントで3位、リーグ戦で準優勝と昨年と並ぶ力をつけている。それどころか、チーム力の高さは昨年をも上回る。淺野は「(リーグ戦では)チームが良くない期間が長かったが、最終的に2位でインカレのシードを獲得できて、本当にチームが頑張った。リーグ戦を通して我慢する力っていうのはついたんじゃないかなと思います」と感触の良さを口にした。
▲昨年以上に欠かせない存在となった淺野。攻守で強い存在感を放っている。写真は春季トーナメントの東海大戦。
自身のパフォーマンスには決して満足していないと話す。しかし、クベマジョセフスティーブ(経営4・福岡第一)が欠場した10月22日の筑波大戦ではダブルダブルを記録。大黒柱の穴を見事に埋め、勝利をもたらした。さらに、毎試合後のインタビューでは「勝ち」や「チームが」という言葉が増え、勝利へのこだわりやチームへの思いは一層強くなっている。チーム内での立場の変化を経て成長した姿を随所で見せている。
▲存在の大きさを大いに見せつけた筑波大戦。17得点12リバウンドと大暴れだった。
8日に対戦する中大には、10月7日のリーグ戦で敗戦を喫している。「中央ともう1回できるのはすごい大きいなと思っている。1回負けているチームなので入りも締まるし、いい組み合わせなんじゃないかなと思いました」とリベンジに燃える。「(昨年のインカレの悔しさは)インカレでしか返せないので、本当に頑張ろうってつもりです。プロの方も見に来ると思うので、ここで爆発して僕の持ち味を見せたい」。今年こそはヒーローになり、チームを悲願の日本一に導く。
▲目標を尋ねると「優勝っス!」と即答。背番号16がチームを日本一へ導く。
文=野見山拓樹(文4)
写真=相川直輝(文4) 鶴本あい(法3) 高野葵葉(文2)