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2023.10.06
陸上競技

【陸上競技部】逆境から生まれた覚悟と向上心  大田和一斗の3年目

 今月2日に第100回箱根駅伝予選会のエントリーメンバーが発表された。メンバー14名のうち、12名が出走する。下級生が多く選ばれるなか、3年生の1人に大田和一斗(いっと)(文3・東農第二)が選出。これまで何度もケガに苦しめられてきたが、培われた覚悟と向上心で這い上がってきた。


▲先月の夏季合宿では好調を維持し、リベンジとなる予選会エントリーを果たした


〇今季にかける覚悟

  大田和は昨年を「棒に振った」と振り返る。夏季合宿で「上のレベルの視線が見えるようになった」と確かな感覚を掴み、予選会メンバーにエントリーを果たした。だが、レース1週間前、疲労骨折が判明し無念の辞退。自身にとっても思わぬ悲劇が起こった。「何もできない虚しさや悔しさで、本当に逃げ出したかった」と当時の心境は忘れられない。その後チームは予選会を突破。本戦出走というチャンスができた。「ケガから立ち上げて、なんとか本戦に」と意気込み、懸命に練習に取り組んだ。しかし、今度は違う部位に痛みが。再びケガを患い、走れなくなった。

2度味わったこの悔しさを“大学における分岐点”とし、誰よりも強い想いを胸に取り組んでいる今シーズン。「この夏にやってきたことを予選会、本戦に絶対繋げないといけない」と強い覚悟が滲み出る。

▲強い覚悟を胸に臨んでいる今季。3月の全日本学生ハーフでは自己ベストを記録


〇常に上を目指す反骨精神

入学してから何度もケガに泣き、苦悩の日々が続いた。それでも目標を見失わない強い心は、高校時代に築かれた。

高校1年生の冬。秋ごろから感じていた痛みが蓄積し、「半月板損傷」という大ケガを患った。日々痛みが増すばかりで、2年生になった夏に手術を決断。本格的な競技復帰は2年冬となり、「何もできなかった1年間」と振り返る。体力や筋力は落ち込み、「チームの最下位にいる」という自覚があった。だからこそ、「走っている人に追いついて、追い越したい。絶対に一番上になりたい」という強い向上心が芽生えた。この想いは、入学後に離脱してしまった際でも変わらず意識した。

さらに、手術を決断したことも大きい。「(手術をしたら)想像できないくらいに痛みが緩和された。自分の経過を理解してくれている人がたくさんいるから、そのためにも投げ出したくない」と競技に対する想いがより一層増した。

▲高校時代の挫折を乗り超えた強い精神力が大学でも活きている


〇見据える先

 これまで、”襷を繋ぐ”という経験は高校3年時に出場した全国高校駅伝のみ。「昨季の悔しさもあって、駅伝で結果を出したい」と箱根出走にも心を燃やしている。自身が見据える像は明確で、「結局、予選会でも駅伝でも1人で戦っていかなければならない。だから1人でもしっかり戦っていける選手になりたい」。そのために、普段の練習から負荷の高い練習や集団でやる場合でも“1人で同じようにできるのか”という考えを持ち、常に単独走を意識している。

  

 度重なるケガに泣かされ、底を味わうことが多かった陸上人生。強い覚悟と向上心で何度も這い上がってきた苦労人は、大舞台に出場するためのチームに欠かせないピースになる。

 


▲今季から弟の大田和 十吾(文1・文星芸大附)がマネージャーとして入部。「ハードワークしすぎることもあるのでたまには休んで」と気遣った。残り共に過ごす時間は1年半。兄弟揃って成長する。


文・写真=河上 明来海(文3)