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〈令和5年度東都大学野球春季2部リーグ戦=4月17日 等々力 専大2―3x東農大〉
▲サヨナラ負けに肩を落とす西舘 145球の力投を見せたが実らなかった
開幕週に連敗を喫し巻き返しを図りたかった専大は、東農大と対戦。延長10回まで0-0で進む投手戦となったが延長11回タイブレークでサヨナラ負けを喫し、3連敗となった。エースの西舘昂汰(経済4・筑陽学園)は、自己最速を更新する152キロをマークする力強い直球で相手打線を沈黙させた。しかし、専大打線も沈黙。圧巻の投球を見せたエースを援護できなかった。
薄暗い空に舞い上がった打球がフェンス際に落ちると、背番号18は本塁付近で力なくうなだれた。「真っ直ぐ1本でしか組み立てることができなかったので、それが連打につながったのかなと」。試合後、西舘は唇を噛んだ。2点を先制した直後の11回裏。先頭の8番・武田選手に三遊間を破られ無死満塁とされると、そこから連打を浴び一気に追いつかれる。三振を奪い何とか1死としたが続く3番の重政選手に直球を捉えられ、左越えに運ばれた。10回まで支配的な投球を続けてきた西舘だったが、最後は4本の安打を浴び力尽きた。「内容どうこうというよりかは、今は勝ちにこだわっている状況なので」と敗戦を悔やんだ。
▲11回裏、先頭の武田選手に左安を打たれる西舘
▲まさに「支配的」な投球を見せたが、最後は集中打を浴び力尽きた
西舘の投球は圧巻だった。力みが目立ち荒れ気味だった前回登板だったが、この日は昨秋のゆったりと足を上げ力感なく腕を振るフォームに戻した。それにより制球も球威も球速も大幅に改善した。前回7つ与えた四球もこの日は申告敬遠の1つのみ。球速も11回に自己最速の152キロを計測するなど、最速を2度も更新。特に延長10回には1死2、3塁から連続三振を奪いピンチを脱するなど、修正力、安定感、集中力の高さを見せつけた。
▲4回に自己最速の151キロを計測した西舘 この日は初回から140キロ後半を連発していた
▲足を上げてから投球動作までが速かった前回からフォームを修正し、本来の良さを取り戻した。
▲10回のサヨナラのピンチを連続三振で切り抜けると、エースは拳を握って吠えた
ひと回りもふた回りも頼もしさが増した西舘だが、その立ち姿にはエースの自覚や責任を感じ取れた。「去年までは吏玖さん(菊地吏玖・現千葉ロッテ)がいて、自分の欲の出るピッチングがあったんですけど、今年は僕が最上級生で、欲を出すようなピッチングをしてたら後輩に示しがつかない」。チームの勝利を第一に考えているからこそ、この敗戦は誰よりも悔しかった。
▲齋藤監督も「安心して見ていました」と信頼を寄せる。指揮官は試合後の会見でエースの投球を称えた。
▲1年生捕手の加藤大悟(経営1・専大松戸)との相性も抜群だった
齋藤正直監督は西舘の好投を称えつつ、「打線がね」と繰り返し口にした。開幕から不調な打線だったが、この日も東農大・長谷川投手の前に沈黙。放った安打はわずか3本と、チームの暗さの原因にもなっている。初回に西村進之介(経済4・栄徳)が内野安打を放ってから11回に松永知大(経済2・創成館)が先制の2点適時三塁打を放つまで10イニング連続で無安打と、開幕週以上に深刻な状態となっている。
▲11回表に適時三塁打を放った松永。「打ったのは真っ直ぐ。4打席目まで得点に絡めなかったので、何とか外野に飛ばそうと思った」と振り返った。
小林寛弥主将(経営4・坂井)も「今、チームは底」と頭を抱える。象徴的だったのは均衡が破れた直後。1死3塁で打席に入った小林はスクイズを敢行。だが3塁走者の松永がスクイズのサインを見落としており、スタートが遅れ本塁憤死。追加点を奪えず、畳み掛けに失敗した。「あそこでサインを見落としているようじゃ勝てない」と振り返り、反省を求めた。
▲主将の小林。試合後は「何とか切り替えて」と明日への意気込みを話した。
齋藤監督は「特に山本(健斗・経済4・松商学園)なんかはオープン戦から非常に調子がよかったんですけど。で、西村にちょっと力みが入ってるんで」とチームの不調の原因を挙げ、本来の当たりが出ていない主軸2人のブレーキに心配する様子を見せた。しかし、「まああれでしょう。3連敗したし、開き直って明日から何とかなるんじゃないですか?人間開き直りよ。これで暗くなってもしょうがないので」と明日からの巻き返しを見据えた。
▲苦しむ西村進(上)と山本健(下)。昨秋打線を力強く支えた2人の4年生の復調こそ、チームが浮上するカギになる。
文=野見山拓樹(文4)
写真=相川直輝(文4)