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2023.01.06
陸上競技

【陸上部】自信の復路も巻き返しならず総合20位 第99回箱根駅伝

<第99回東京箱根間往復大学駅伝競走=1月3日 神奈川・芦ノ湖~東京・大手町 5区間 109.6キロ>


シード権獲得へ巻き返しを図った専大だったが、遠く届かなかった。往路は主力を欠き総合19位。復路で巻き返しを図りたい中、山下りを任された粟江倫太郎(経営3・三浦学苑)が区間7位の好走を見せた。しかし、7区中山敦貴(経営3・湘南工科大附)が区間20位で総合20位に順位を落とすと、8区野下稜平(経済3・鳥栖工業)、9区南里樹(経営4・専大松戸)と挽回することができず鶴見中継所で無念の繰り上げスタート。10区の小島光佑(経営4・北見緑陵)も本来の走りをすることができず、総合20位でフィニッシュ。シード権獲得の目標は今年も叶わなかった。

▲フィニッシュのゴールテープを切る小島


6区に起用されたのはこの1年で大きな成長を遂げた粟江倫太郎。専大を含む7チーム(国士舘大、山梨学院大、大東大、日体大、関東学生連合、立教大)が復路一斉スタートとなった。自身のペースを掴みつつチームに勢いをもたらしたかった粟江は、集団の中で勝負を制することを考え、自信のある上り区間での勝負を企てる。するとプラン通り、上り区間終了時の計測ポイントを区間5番のタイムで通過。下り区間に突入にしてもなおペースが衰えることはない。最も厳しいとされるラスト3キロの平坦区間では、6区を走るきっかけにもなった先輩の応援もあり気合で駆け抜け、小田原中継所に飛び込んだ。粟江は「自分でもびっくり」と振り返る区間7番、59分30秒の好走。「上は区間5番まで12秒でまだまだ詰められたという思いと30秒遅ければ区間12番という結果。ギリギリだった。目標としていた専大記録(59分07秒)の更新はできず、また来年挑戦したい」と冷静にレースを振り返り、その先へ闘志を燃やしていた。

▲6区を任された粟江。1年間をかけてこの区間へ準備をして来た

▲国道1号最高地点。序盤の上りから攻めの走りを展開した

▲小田原中継所までの平坦区間では苦しい表情を見せるも、高校・大学の先輩であり6区を志願するきっかけとなった横山佑羽さんの応援もあり「気持ちがハイになった」と振り返る

▲横山さんの応援に拳を突き上げて応えた粟江


しかし、うまく流れに乗ることができない。7区には二度目の箱根路となった中山敦貴が出走。序盤は落ち着いて余裕をもって入ることができたが、想定より早く脚が止まってしまい後ろから迫った山梨学院大、日体大、帝京大に先行を許す。その後も苦しい走りが続き区間20位、総合順位も1つ落とし8区へ襷を渡した。中山は「昨年は流れに乗れず実力が発揮できなかったが、今年は入りは悪くなかった。練習の出来からするともっと走れたと思う。総合的に力のなさを痛感したので、今一度考え直して取り組んでいきたい」と悔しさを滲ませた。

▲粟江から良い流れでもらった襷。「粟江ならやってくれる」と信頼しており、走り出しに焦りはなかった。

▲平塚中継所にて、中山から野下の襷リレー


8区には当日変更で3年連続の出走となった野下が起用された。襷を受け取った時点では前の立教大と40秒の差があり、「何としても立教には負けたくない。追いついてやろう」という気持ちでスタートをした野下だったが、立教大の8区山本選手は6.7キロの計測ポイントで区間3番と快走をみせており、追いつくことができなかった。しかし過去2年で得た山登りの経験を活かし、コース後半にある遊行寺の上り坂でも自分の走りを貫くと、最終的には区間17番とほぼ想定通りのタイムで襷リレー。「8区はアップダウンのあるタフなコースで自分に利があった。今後に繋げる良い経験ができた」と自信をつけた走りとなった。

▲富士山を背に海岸線を走る野下

▲事前のレースプランでは1時間6分切りを目標にしていた野下。結果は想定より16秒の遅れで襷をつないだ


流れを変えたい専大は4年生の南里樹が9区へ。しかし、当日変更で急遽出番を任された南はコースの下見もしていなかった。「当日は想像以上にきつく、長く感じた。襷をつなぐ一心でひたすらに走った」と気迫で体を前へ進める。横浜駅の給水ポイントでは4年間苦楽を共にした仲間であり親友の寺井望(経営4・洛南)から「引退まであと25分」と声を掛けられ、更に気持ちが入った。

▲戸塚付近(上)、生麦付近(下)を走る南

しかし、結末は残酷だった。鶴見中継所の直線に入った時点で、繰り上げスタートまで残り数十秒を切っていた。南は左手に襷を握りしめ最後の力を振り絞り中継地点へ走る。だが想いは及ばず、あと数十メートルに迫ったところで繰り上げスタートを告げるピストル音が響いた。時間にしてわずか10秒。専大は襷をつなぐことができなかった。「何が起こったのかよくわからなかった。覚悟はスタート前からしていたが、まさか最悪の事態になるとは」。力を出し切った体と絶望感から動くことができなかった。その場に力なく倒れこみ、涙があふれた。中継所には悲痛な嗚咽が響き渡った。

南はこれで陸上競技を引退する。「最後までつらいこと、きついことばかりだった。競技をしていて楽しいと思えたことは一度もない。しかし、箱根駅伝を2回も走ることができ、ここまで成長させていただいた親、監督や友人、関わってくださった方には感謝しかない。本当にありがとうございました」と最後に今までの苦難と感謝の言葉を並べた。



無念の繰り上げスタートとなった10区には同じく4年生の小島光佑が任された。最初で最後の箱根駅伝出走となったものの、9区の南が目の前に迫っていたが襷がつながらなかったことに動揺を隠せず本来の走りをすることができない。体も思うように動かず、終始苦しい表情となった。ゴールが近づくにつれ、増える大観衆から鈴なりの拍手が送られ「ふり絞らないといけないという気持ちになった」と振り返る小島。結果は復路20位、総合タイム11:19:28、総合20位でゴールテープを切った。小島は「1、2年目は怪我ばかりで記録もなく、同級生が記録を伸ばしているのをみてすごく焦った。しかし、2年間での失敗が3、4年目で経験として生かせた。最後に箱根駅伝を走れて終われたことは、充実した4年間を過ごせた証かなと思う」と専大で過ごした競技生活を振り返った。

▲10キロ地点の給水ポイント。監督からは「ここから戻せる」と声がかかった

▲ゴール付近を走る小島。苦しいながらも最後まで走り切った


シード権獲得を掲げた専大の挑戦は、3年連続総合20位という結果に終わった。直前で足並みが揃わず、本来の力を存分に発揮することができなかった。来年は節目となる第100回大会。予選会への出場権は全国の大学に門戸が開かれ、出場枠争いがより激しくなることが予想される。3年間の経験と悔しさを糧に、専大の伝統への挑戦は続く。



【結果】

6区 粟江倫太郎 59:30  区間7位

7区 中山敦貴  1:06:36 区間20位

8区 野下稜平  1:06:16 区間17位

9区 南里樹   1:12:32 区間19位

10区 小島光佑  1:15:57 区間20位


復路記録 5:40:53 20位

総合記録 11:19:28 20位



文=相川直輝(文3)

写真=相川直輝(文3)、高橋尚之(経営3)、山縣龍人(法3)、河上明未海(文2)、鶴本あい(法2)、髙野葵葉(文1)、北原倖多(文1) 写真提供=太田港士