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2022.12.10
バスケ

【バスケ部】あと数センチ届かず まさかの準々決勝敗退

〈第74回全日本大学バスケットボール選手権大会=12月9日 代々木 専大58-60日大〉


▲無念の準々決勝敗退 最後のフリースローを外した淺野ケニーは崩れ落ち、悔し涙を溢れさせた


 わずか数センチが勝負を分けた。ベスト16で明大に快勝した専大は、代々木第二体育館で行われた準々決勝で日大と対戦。今年公式戦で3戦全勝と相性の良さを見せていたが、この日は中盤以降主導権を相手に握られる。第2Qに逆転を許すと、そこから一進一退の攻防が続くが優位に立つことができない。劣勢のまま最終盤に突入し、58-60で迎えた残り0.2秒、専大はフリースローを獲得し同点のチャンスを得る。しかし、淺野ケニーが2本とも外し、クベマジョセフスティーブの懸命なタップもリングに弾かれそのままタイムアップ。悲願の優勝への道は、準々決勝で閉ざされた。


 第1Qは専大が優位に試合を進めた。淺野ケニーの3ポイントで先手を取ると、喜志永修斗主将も3ポイントを決め6-0とする。その後相手に7点を奪われリードを許すが、喜志永がさらに5得点を重ね、簡単には流れを渡さない。その後クベマジョセフスティーブがインサイドで得点し、淺野が3ポイントをもう1本決め点差を広げる。最後は久原大弥のブザービーターが決まり、20-12と最高の立ち上がりを見せた。


▲第1Qに2本の3ポイントを沈めた淺野ケニー

▲序盤から精度の高いシュートを放ち続けた喜志永

▲鈴木悠斗主将 前戦に続き試合のリズムを作った


 しかし、ここから日大に流れが渡る。第2Q開始直後に相手に3ポイントを許すが、ケイタシェイクブーバカーのバスケットカウントや華麗なシュートブロックで専大がペースを保ち続ける。だが、日大が1回目のタイムアウトを取ってから試合は日大側に傾き始める。クリバリ選手がバスケットカウントを含め立て続けに5点を取り24-22。さらに陳岡選手に3ポイントを決め日大が試合をひっくり返す。喜志永がこの日3本目の3ポイントを沈め27-25とするが、宮城選手の3ポイントでもう一度日大が前に出る。専大が一度タイムアウトを取るが、タイムアウト明けに飯尾選手に3連続得点を許し27-34と突き放された。米山ジャバ偉生がスティールから得点を奪うがそこから点差を詰められず、29-34で折り返した。


▲ケイタシェイクブーバカー 第2Qは攻守で輝きを放った

▲劣勢に立たされても、喜志永はチームを鼓舞し続けた

▲米山ジャバ偉生

▲久原大弥


 第3Qも一進一退の攻防が続く。開始早々米山とスティーブの連続3ポイントで専大が一歩前に出るが、日大の連続得点で35-39と押し返される。そこからケイタのバスケットカウントと米山のドライブからの得点で41-41とするが、日大の鴇田選手の連続得点などで日大がリードを広げ、43-48で最終第4Qに突入した。


▲3ポイントシュートを放つ米山

▲淺野ケニー


 試合は最後までどちらに転ぶかわからなかった。5点を追う専大は上村大佐の3ポイントと淺野のフリースローで48-48の同点に追いつく。その後コンゴロー選手のバスケットカウントで日大が前に出るが、スティーブがこの日2本目の3ポイントを決めもう一度同点とする。さらに米山がバスケットカウントを奪い54-51とようやく専大がリードを奪った。


▲3ポイントを決めた上村大佐

▲勝ち越しのバスケットカウントを奪い、フリースローも決めた米山


 だが、日大は飯尾選手の連続得点ですぐさま54-55とすると、矢澤選手の3ポイントが決まり、点差が4点に広がった。専大はタイムアウトを取り、直後にスティーブと淺野の連続得点でもう一度同点に追いつくが、残り20秒で矢澤選手のシュートが決まり58-60。日大の勝利が迫ったが、残り0.2秒で淺野がファールを受けフリースローを獲得する。2本決まれば同点で延長に突入。会場は異様な熱気と雰囲気に包まれた。


▲決めれば延長、外せば敗退。淺野にかかる重圧は計り知れないものだった


 背番号16の背中には重圧がのしかかった。「フリースローは得意だが、遠くの距離のシュートを打った後で距離感を掴み切れなかった」(淺野)。1本目が外れ、淺野は頭を抱えた。それでもあと0.2秒。主将の喜志永が淺野に声を掛ける。言葉を受けた淺野は、大きく息を吐いて2本目を投じた。ティップインで同点を狙うためボールをリングに当てる。弾かれたボールをスティーブが懸命にタップ。しかし、ボールはリングを通ることはなかった。喜びを爆発させる日大。コートに力なく倒れ込む専大。試合が終わった瞬間、コートには悲痛な光景が広がった。20年ぶりの優勝への道は、準々決勝で閉ざされた。


▲2本目はティップインを狙うも、叶わなかった

▲目標だった優勝に届かず、選手たちは崩れ落ちた


 佐々木優一監督は試合後のインタビューで目を潤ませながら「気持ちで負けていたとは言わないが、延長になるかどうかのあと一歩、紙一重のところ。最後の気持ちの部分でこういう結果になった」と悔しさを滲ませた。「最後の0.2秒はキャッチしたらアウトなのでタップしかなかった。(淺野)ケニーも普段だったら入っていた。まだ2年生であそこまでやってくれたので誰も彼は責めない」「勝たせてあげられなかった監督の責任。誰も悪い選手はいない。選手たちには胸を張って、この結果をしっかり受け止めてほしい」。指揮官は選手の奮闘を最後まで称え続けた。


 「本当に申し訳ないし、最後4年生を勝たせてあげたかった」。淺野ケニーは結果を受け止め、4年生への思いを口にした。「最後相手が追い上げてきた場面で、思い切ってやれと4年生の先輩方が言ってくださった。そういう風に仲間の背中を押せるのは大きい人にしかできない。すごく感謝している」。「来年は大事な場面で点数を取れるような選手になってチームを勝たせられるようになりたい」とリベンジを誓った。


▲淺野は4年生への感謝を口にし、来年のリベンジを誓った


 4年生の多くが悔しさと無念さを口にする中、主将の喜志永は感謝の言葉を並べた。「悔しいが、それよりも多くの観客や応援してくれる人、相手、審判など、環境を作ってくれた人に感謝しなければいけない。2回のケガで何回も心が折れそうになったが、こういう舞台に帰ってくることができた。春優勝して、自分が帰ってきてから負けたので、自分の責任なのかななんて思う。みんな信じてついてきてくれたのでこのチームに感謝したい」。ケガを乗り越え特別な思いで臨んだ初めてのインカレは準々決勝で去ることになったが、喜志永の表情は晴れやかだった。「勝たなければ意味がないので結果に関しては満足していないが、この環境でプレーできたことには満足している。後輩たちにはこれを糧にして、忘れ物を取り返してほしい」と残して、会場を後にした。


▲2度のケガに泣きながらもインカレのコートに立つことができた喜志永。試合後は感謝の言葉が溢れた。


 優勝候補の一角に挙げられた能力者軍団の戦いは、ベスト8で幕を閉じた。


文=野見山拓樹(文3)

写真=髙野葵葉(文1)