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2022.11.25
陸上競技

【陸上部】「悔しさだけは絶対に持つ」木村暁仁のこれまで

先日行われた箱根駅伝予選会において、専大としては16年ぶりの日本人1位でゴールテープを切った木村暁仁(経営3・佐久長聖)。1年次の予選会では上級生を押しのけチームトップを取るなど華々しい記録を残す一方、常に怪我との戦いでもあった彼の生い立ちに迫る。

▲日本人トップでフィニッシュした木村

第99回箱根駅伝予選会


〇中学で陸上の世界へ

千葉県市川市で生まれた木村は、幼少期を千葉県と長野県で過ごす。中学校は長野県松本市の女鳥羽中に入学。陸上部の顧問の先生に長距離を勧められ入部。3年次にはジュニアオリンピックのA3000mに出場し5位入賞を飾る。「全国レベルの大会で初めて戦うことができて、良い経験になった」


〇「もっと上のレベルで戦いたい」

高校は長野県にある佐久長聖高校へ進学。佐藤祐基や大迫傑といったオリンピアンをはじめ、名だたるレジェンドを輩出している強豪校だ。ジュニアオリンピックでは5位という結果だったが、もっと上のレベルで戦いたいと思い進学を決断した。しかし思いとは裏腹に1・2年次は怪我に苦しまされる。「1週間練習できたら2か月は怪我をするみたいな。脚も10か所くらい折れた」と、思うように走ることができない日々を過ごす。ようやく身体ができた3年生では全国高等学校駅伝競走大会、通称「都大路」に出場。6区で区間3位だったものの、チームとして目標に掲げていた優勝を果たすことはできず「貢献できなかった」と悔しい思いだった。都大路が高校最後のレースだと思っていた矢先、1月に行われる全国都道府県対抗駅伝競走大会のメンバーに長野県代表として選出されると4区で区間2位と力走。チームも優勝を飾り、「(区間2位と)負けてしまっているが、しっかりと狙って挑戦するレースができた」と高校最後のレースを振り返る。


〇箱根駅伝出場を目指して 専大へ

木村と専大との出会いは高校2年の冬にある。都大路のメンバーに選ばれていたがレース前日の刺激練習で足を骨折する怪我をし、激しく落ち込み歩いているところをすれ違った専修大学の長谷川淳監督に「大学とか先のステージで悔しさを晴らせばよいから。頑張りな」と声をかけられたことがきっかけだった。当時、箱根駅伝の本選出場は第90回大会を境に6年遠ざかっていた専大だったが、箱根駅伝を題材とした小説「風が強く吹いている」に感化されていた木村は「俺が連れて行ってやろう」という思いもあり専大へ入学を決断した。


迎えた箱根駅伝予選会。コロナ禍という事もあり、木村にとって大学後初めての本格的なレースとなったが、1年生ながらチームトップ、総合44位でフィニッシュ。チームは総合10位と7大会ぶりの本選への出場権を獲得した。まさに、自身が箱根駅伝に連れて行くという入学前の思いをかなえる形になった。しかし、その後怪我をし本選への出場もかなわず。「相当落ち込んだ。いろいろ不幸が重なってメンタルブレイクというか」。痛みの原因も分からず、走りたくても走れないという木村にとって今までで一番悔しい日々を1年ほど過ごすこととなった。


〇2年次 復活の箱根本選

怪我からの復帰後、待っていたのは箱根駅伝本選だった。「走れない期間が長く、チームに迷惑をかけていた中で(メンバーに)選んでいただいたことが素直に嬉しかった。チームが予選会を突破してくれたからには走りで貢献したい気持ちがあった」という思いで臨んだ。当日は区間変更で1区にエントリーされると、レース終盤の仕掛けどころで2位集団に食らいつき区間4位と好走をみせる。「復活しなければというプレッシャー、周りの木村を使って大丈夫なのかという雰囲気をすべて打破できたことは気持ちがよかった」と今までに最も印象に残ったというレースを振り返る。



〇大切にしていること

「悔しさだけは絶対に持つ。どんなにうまくいったレースでもそこで満足だけはしない」。木村が走るうえで最も大切にしていることだ。先日行われた予選会では、日本人1位、総合8位という走りを見せ嬉しさが勝っていたが、「冷静になって考えると外国人選手に負けている。ほかのチームのエース級がいなかったレースでもあり素直に納得して良いレースでは全くなかった」と話す。インタビューでも、中学3年時のジュニアオリンピックA3000mで5位入賞するももっと上のレベルで戦うために佐久長聖へ入学、高校3年次の都大路で6区区間3位も「貢献できなかった」と語っておりどんなレースに対しても悔しさを持つ姿が見受けられた。



〇父親の存在

木村が最も尊敬する人物は父親だ。自分より必ず一歩前にいて、くぎを刺してくれる存在だという。箱根駅伝の本選後も、ポロっと「でも1位じゃないよね」と言われたそうだ。木村も「4位ではあるが、(自分より区間順位が上の)4人中3人は同学年。負けていいと認めていい相手ではない」と素直に悔しさも持っていた。陸上を辞めたいと思った時も父親の言葉に励まされた。「父の存在は偉大」



〇肉を食べずに走る

木村は強くなるために、練習以外の食事や陸上に対する姿勢に重点を置いている。特に食事に関しては肉を食べないことを実践している。ヴィーガンではないと話すが、自身が温暖化に対して気を遣わなければいけないと考えたとき、それに加担しているといわれている動物の肉を食べないことに決めたことがきっかけだ。もともと、胃もたれしやすい体質だったが肉を食べないことにより体重が落ちて怪我をしにくくなったり、体調も良くなった。「肉を食べないとなった時、何を摂ればいいのか。そうすると食べたものがそのまま体になる栄養はすごい大事だなと。アスリートとして考えていかないといけない」と、食事の大切さを感じていた。


〇箱根とその先

箱根駅伝はどの区間を走ってもチームへの貢献を大きくしていきたいと目標を立てている。そして、その先については「陸上ならもっと上のレベルで、就職するなら就職先で。どのステージに行っても活躍できるように」と話す。陸上に関して、具体的には「マラソンを狙って行きたい」とさらなるステップアップを志す。


文=相川直輝(文3)

写真=月間陸上競技