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2015.04.01
ラグビー

【ラグビー部】【専Sation第13号番外編】専大ラグビー部監督 村田亙インタビュー前編

3月11日に発行された「専Sation第13号」の中で、村田監督のインタビューを掲載しました。

ここでは誌面の都合上、掲載することのできなかった村田監督のインタビューを、前編・後編の2回に分けて掲載致します。

今回は前編です。



※今季・今年…2014年、昨季・昨年…2013年、来季・来年…2015年

※選手の学年は2014年度のもの

※インタビュー取材は12月中旬、入れ替え戦後



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・“規律”と“対話”


――就任からの3年間を振り返っていかがですか?

「私自身は“規律”を重視するという意味で厳しい指導者だったので、始めは大変だったと思う。今年の4年生が1年生の時、私は7人制ラグビー日本代表の監督をしていたので、専大ではアドバイザーという形で選手たちと関わっていた。そこまで選手たちの中に入っていかなかったけど、アドバイザーの時はほとんど怒らなかった。当時の選手たちは私のことを、理想のアドバイザーくらいに思っていたんじゃないだろうか。

 でもアドバイザーから監督になった途端、『俺ってどうしてこんなに怒んなきゃいけないんだろうな』ってくらい初めの頃は怒っていた。けれど、それだけ規律が守られていなかった。ルールを普段の生活から守っていかないと、試合でもルールを守れない選手が出てきてしまう。プレーと生活面は直結するから。だから、自分を変えてでも指導をしていかなければならない部分もあった。相当厳しく当たり前のことを伝えてきただけなんだけど、その当たり前のことを当時の選手たちがまだできていなかったから。例えば、ごみが落ちていたら拾って捨てる、下駄箱に靴をちゃんと入れる。そういうところを直していかないと、この後選手たちが社会人になったときに、自分たちが困ることだから。やっぱり自分のことは自分でやらなくてはいけない。そういうことをずっと言い続けてきた。監督になって四六時中選手たちと一緒にいたからこそ、みんなの行動がわかってきた」


――監督が選手たちと向き合う際に、大事にしていることはありますか?

「“対話”することが大事。監督就任1年目は指導者が私1人しかいなかったから1人当たりの時間は短かったが、部員全員と年間で4回ずつ個人面談をした。でも、昨年から大東コーチが来たこともあって、昨年は1人に対して30分くらい面談することができた。今年は長い選手で1時間近く面談をしている。それくらい会話して、コミュニケーションをとって、お互い良いところ悪いところを指摘しあって、要求しあう。中には『なんで僕はレギュラーじゃないんですか?』と言いに来る選手もいる。でも、そこは指摘してあげないといけない。指摘してあげると、選手はそこを意識するようになる。やっぱり“対話”が大事。『話したいことがあるなら、どんどん監督室に来い。来て言いたいことを話せ。俺はいつでも空いているんだから、どんどん言いに来い』って選手たちに言ったら、選手たちの方から少しずつ私に言ってくるようになった」



・選手起用のポリシー


――選手の起用法について教えてください。

「完全実力主義。けれど例えば、4年生と1年生で同じレベルであれば、私は4年生を使う。1年生よりも」


――それは経験の差が大きいということでしょうか?

「経験と、そこまでに積み重ねてきた努力と芽生えた責任感は、1年でも多く大学でプレーしてきた選手の方が持っているはず。けれども例外もある。例えば今季たくさん試合に出た池田大芽(経営1・秋田中央高)。彼はもしかすると開幕の時には4年生よりも劣っていたかもしれない。ただし、最後の入替戦までには大きく成長して、必ず最後には必要な選手になるだろうという予測の元、彼のように使い続ける選手も何人かいる。それは期待を込めてということもある。私の場合、最後にどんなメンバーでどのような戦い方としたいかを、ある程度逆算してチームを組むことがある。しかしそれだけではなく、良い意味で期待を裏切って下のチームから出てくる選手もいる」


――監督が選手を起用する具体的な基準はありますか?

「3つのセレクションポリシーというのを、監督就任当初に掲げた。まずはディフェンスができる選手。次にボールをキープできる選手。最後にアタックでもしっかりファイトできる選手。この3つは今でも変わらない。ディフェンスができる選手というのはやはり信頼される。それが今年の主将だった棚橋(宗一郎、経営4・國學院大栃木高)。そんなに器用でなくてもディフェンスができるから、みんな付いてきた。アタックでボールキープできないってことは体が弱いってことだから、体を強くしろということ。しっかり当たってもボールさえキープしてくれれば、そのボールは次につながるわけだから。最後に敵に負けない、1対1でしっかりファイトできる、やられたらやり返すというハートを持った選手。こういう選手が今少しずつ増えてきている。だから、この間の入替戦でも勝つことができたのだと思う」



・「“規律”を守りながら魅せるラグビー、楽しいラグビーをしたい」


――理想の指導者像はありますか?

「理想は恩師でもある法大の谷崎監督(※1)。私が東福岡高に入学したとき、就任2年目の新米監督だったんだけど、当時すごいスパルタで厳しい練習を3時間以上やっていて。その東福岡高というチームは9割が素人で、経験者が1割しかいなかった。私が入学した当初は県大会にも出られないチームだったのが、その監督が来ただけでガラッと変わって。

 その監督が私に常日頃言っていたことは、『お前の好きなようにやってこい』。それだけで救われるというか、みんなには厳しいのに私には『お前の自由にやっていいから』と言ってくれたことをずっと忘れていない。そこからラグビーの楽しさを知った」


――指導者としての哲学は何かありますか?

「哲学という意味では、やはり“規律”かな。“規律”を守りながら魅せるラグビー、楽しいラグビーをしたい。観ていて楽しいラグビーをしていれば、専大ラグビー部のファンもどんどん増えていくと思う。私は現役時代にフランスでもプレーしていたので、フレンチラグビーを体感している。だからこそ、フランス代表のシャンパンの泡が弾けるようなシャンパンラグビー、全員がグラウンドを幅広く使うようなラグビーをしたい。そういうラグビーをするために、就任してからの2年間は布石だった。選手たちは大変だったと思うけど体作りとフィットネス、それしかやっていなかった。今年始めたフレンチラグビーの第1章はまだ始まったばかり」


(※1)谷崎重幸さん…1982年に法政大学社会学部を卒業後、私立東福岡高校に赴任。東福岡高ラグビー部監督就任3年目で部を全国大会へ導き、その後3連覇を含む4度の日本一を経験している名将。



・「指導者としては学生生活の後のことも考えてあげなければいけない」


――選手たちを指導するのに大事なことは何ですか?

「上手くONとOFFを使い分けることが大事。いつも楽しいのはつまらないだろうし、やっぱりどこかで厳しさは必要。そこをいかに指導者が状況を見ながら一気に上げるのか、それとも一回落とすのかということ。ラグビーは試合も練習も動いている生き物なので。もちろん選手たちが疲れていたら休ませなければいけないが、休ませすぎても今度は体力が戻らなくなる。そういったことを四六時中、大東コーチと寺井トレーナーと私の3人で考えている。

 ただ、選手といっても学生なんでね。まずは学校に行かせること。指導者としては学生生活の後のことを考えてあげなければいけないから。ラグビーの指導はするんだけど、それがいつの間にか人間教育の場になっていて、良い選手を社会人に送り込む。社会人になったら大学生活よりももっと長い。人生の半分どころか3倍も4倍もあるわけだから。でも大学にいられるのはたった4年間しかないわけだから、選手たちにはラグビーのことを第一に考えて、それでしっかり勉強して自分が次のステージへ行くことをプランニングしてほしい」


――監督が練習メニューを考えるときに意識することはありますか?

「練習の質と時間はいい意味で2時間以上練習したことがほとんど無い。1つの枠を最大2時間にして、短い時間で効率よく練習する。他にもしっかり食事を食べさせなければならないし、練習後の時間を計算しての計画なのでね。だから2時間以上の練習は必要ない。全体練習の後に個人練習とかもするから、それを含めたら2時間を超えることはあっても、結局ラグビーの試合というのは1時間40分で終わるから、それ以上やる集中力はいらない。実際それ以上やっても無意味だったりする。一番大事なことは1時間半、試合の時間、その時間を集中してできるかどうか」



・「選手の体つきが変わっていくのが楽しみ」


――1、2年目はディフェンス、フィジカルトレーニングメイン、今年はアタッキングメインの指導でしたが、来年はどういったことを重点的に指導していかれますか?

「まずはさらに体を大きくしていかないと。見ての通り、まだまだ1部のチームの方が体が大きい。なので、まずはサイズアップを図る」


――それでも今季の試合では、専大の選手が倒れている場面が少なかったように感じるのですが?

「うちの方が小さいんだけど、全部向こうが倒れる。今季からスタッフに入ったS&C潮田コーチの元、新たに取り入れたコンバット(レスリング)セッションのおかげかな。それだけ芯ができて強さが出てきたから、やってきたことは間違いない。

 あとはしっかりボリュームをつける。余計な脂肪はいらないから、筋肉の鎧で固めてくれれば、小さくても強いっていうことが証明できる。だから、これから選手たちの体つきが変わっていくのが楽しみ。それとともに、今のスピード、スタミナ、スキルを全て一気に押し上げる。押し上げて初めて同じ舞台に立てると思う。



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プロフィール

村田亙(むらた・わたる)

1968年福岡県生まれ。東福岡高出身。平2文。

専大在籍時にはラグビー部主将として関東大学リーグ戦優勝に貢献。大学卒業後は東芝府中で日本選手権3連覇に貢献。

その後フランスへと渡り、日本人初のプロ選手となる。日本代表としてはキャップ数41を誇り、ラグビーワールドカップに3度出場している。

2008年に40歳で現役引退。その後7人制ラグビー日本代表監督としてラグビーワールドカップセブンス予選を勝ち抜き、本大会へと導いた。

2012年より専大ラグビー部監督に就任。3季目となる2014年、悲願の1部復帰を果たした。