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11月11日に明治神宮球場にて東都大学野球秋季入替戦対青学大の第3戦が行われた。5番・渡辺和哉(経営3・文星芸大附高)の3戦連発となる本塁打が決勝点となり、最後は今季チームを引っ張り続けた角田皆斗(商4・栃木工高)が試合を締め6-4で勝利。4季ぶりの1部昇格を果たした。
勝者が1部への切符を手にできる運命の第3戦。最後に野球の神様が微笑んだチームは専大だった。昨日に行われた第2戦でサヨナラ負けを喫したものの引きずることなく上手く切り替えて試合に臨めたのは今年の専大のチーム力を象徴していた。
マウンドに上がったのは第2戦で先発を任され5回1/3を投げた高橋礼(商1・専大松戸高)だったが、初回から青学打線に捕まってしまう。2死まで追い込むもそこから高めに浮いた甘い球をとらえられ3連打を浴び、0-1で先制を許してしまう。
1部昇格への並々ならぬ思いが1回裏の猛攻撃として表れた。1番・重野雄一郎(経営3・専大松戸高)が先陣を切り、センター前ヒットで出塁する。続く2番・伊與田一起(経営2・明徳義塾高)が二塁へ必死のヘッドスライディングを見せ、無死2,3塁のチャンスに広げる。そして第2戦ではスタメンを外れ、再び3番に戻ってきた荒木翔平(経営4・横浜高)が魅せた。初球をライト前に運ぶ2点タイムリーで逆転に成功する。続く4番・濱田竜之祐(商3・鹿児島実業高)、5番・渡辺も連打で続き5連打で無死満塁となったところで青学大先発・岡野をノックアウト。マウンドに上がった2番手・福本の制球も定まらず、6番・森山恵佑(商2・星稜高)は押し出しフォアボールを選び、さらに1点追加し3-1となる。そして8番・時本亮(経営3・大垣日大高)のショートゴロの間に1点を奪い4-1と3点差をつけ、最高のスタートを切る。
しかし青学大もじわりじわりと迫ってくる。先発・高橋は2~4回まで毎回ランナーを背負い、思い通りのピッチングができずに苦しむ展開に。2,4回に1点ずつ奪われ4回を終了して4-3と1点差に詰め寄られ、神宮球場には緊迫した空気が漂い始めた。
5回表、先発・高橋に代わって2番手・角田皆斗(商4・栃木工高)が3戦連続登板でマウンドに上がった。1戦目では139球、2戦目では107球と身体的にもピークを達している中での登板は過酷なものだったが、先頭打者にヒットを許すも、なんとか踏ん張り味方の追加点を願った。
願っていた追加点を奪ったのは2戦連発のホームランでチームを1部に引き寄せた男、5番・渡辺だった。5回裏、この回の先頭である2番・伊與田がフォアボールを選び、2死3塁の場面で回ってきた背番号10。カウント1-1で振りぬいた打球は弧を描いてレフトスタンドへ一直線。青学大に行きかけた勢いを再び専大に戻す貴重な追加点となり6-3と再び3点ビハインドとした。
▲3戦連発で勝利を引き寄せた5番・渡辺和哉(経営3・文星芸大附高)(写真=齊藤麻)
スタミナに自信のある角田ではあったが球威は初戦と比べればはるかに落ちていた。直後の6回表、持ち味のストレートも140km/hに達しなく、先頭にヒットを許してしまう。機動力のある青学大は続く打者にピッチャーへのバントヒットを決められ、無死1,2塁と得点圏にランナーを背負ってしまう。しかしここで女房役、時本が肩で角田を救う。緊迫した空気のカウント1-1から外れたボールをすぐさま二塁に牽制球を投げ、タイミングは…アウト。1死1塁となり、その打者を三振で切り抜け2死1塁に。1番・小林にタイムリースリーベースを浴び、6-4となるも、時本の好プレーがなければ1点差に迫られ、結末は変わっていたのかもしれない。
5番・渡辺の2ラン以降、青学大・福本の制球が定まり始め、6回には併殺で抑えられ、7回は互いに三者凡退で両チームの意地の張り合いが繰り広げられる。
8回表、再び角田にピンチが訪れる。先頭打者にヒットを許し、手堅くバントで得点圏に送られ、続く打者にツーベースを放たれるも二塁走者はホームには還れない。1死2,3塁の窮地の場面で角田はギアを上げる。角田が選択したのは直球勝負。ここにきて140km/hを超えるストレートは空を切り、続く打者にもストレートで押し空振り三振でチェンジ。一部昇格にかける思いがあふれ出た投球内容は球場中の心を奪った。
そして6-4で迎えた最終回…。固唾を飲んで見守る観客、ベンチ、グラウンドのナインたち。この回の先頭打者は初球を打ち上げサード・濱田が捕って1アウト。続く打者にはセンター前に運ばれ、1死1塁に。続く4番・高島を渾身のストレートで空振り三振に抑え、あと一人…。「ここで終わってくれと思った」。会場からも「あと一人」のコールが響く中、最後の打者に角田は全力投球で真っ向勝負をし、ショートゴロで打ち取るとベンチを飛び出したチームメイトに囲まれた。中には目に涙を浮かばせている選手も見られた。4季ぶりの1部昇格を果たし古豪復活となった。
来春から舞台は明治神宮球場に舞い戻ることとなった専大ナイン。打撃は入替戦のスターティングメンバーがほぼ残るとはいえ大黒柱の4年生投手が抜けた穴は大きい。1年ながら2部での防御率1位である高橋を筆頭にいかに穴を埋められるかが新チームの課題となるだろう。わずか一年足らずでチームを1部昇格させた指揮官、斎藤正直監督が率いる専大野球部の未来は輝かしいものであることを期待したい。
▲4季ぶりに神宮球場へ舞い戻ってきた専大野球部のみなさん(撮影=斉藤葵)
▲胴上げの様子(撮影=斉藤葵)
⚫小林夏樹主将(経営4・山梨学院大附属高)のコメント
「(今日の試合について)先制されたが、取り返した。負けるイメージはなかった。4年間やってきて苦しいこともあったが、最後までやり遂げられてよかった。幸せな野球人生だったと思う。(後輩へのメッセージ)三年の時に一度一部にあがったが、二部に降格してしまった。なんとか1部に残留してほしい。
角田皆斗投手(商4・栃木工高)のコメント
「今日の試合について青学の選手の気迫が伝わってきた。8回のピンチの時は全球ストレートで、思いきり気持ちで投げた。最後抑えた瞬間は、ここで終わってくれと思った。(4年間振り返って)チームの雰囲気が明るくなり、野球をやりやすい環境になった。監督のプラス思考で前向きな姿勢がチームの雰囲気に表れたと思う。後輩にはまずは、残留してほしい。(同じ投手として切磋琢磨しながら4年間ともに過ごした池田駿投手(商4・新潟明訓高)について)池田は18番を背負っていて、リーグ戦で結果が出ずに一番苦しかったし、悔しかったと思う。それでも落ち込んでいる姿を見せずに最後まで投手陣を引っ張ってくれていたし、自分のことも支えてくれてやはりエースだと思いました」
高橋礼投手(商1・専大松戸高)のコメント
「とりあえず勝ってほっとした。9回まで投げることは考えず、毎回全力で投げることを考えていた。1部に上がり、これからは厳しい戦いが続くと思うが、仲間を信じて自分のピッチングをしていきたい」