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〈全日本学生柔道体重別団体優勝大会 10月22日 =尼崎ベイコム体育館〉
▲敗戦が決まった瞬間。既に佐藤(右)の目には涙があった
昨日、1.2回戦で圧倒的な勝利を収めた専大は悲願の8強入りを目指し3回戦で桐蔭横浜大と対戦。両者ともに引けをとらない大接戦となったが、1勝2敗4分けとわずかに及ばなかった。今大会で4年生は引退し、後輩へと引き継がれる。
「しぶとく粘る、諦めない」。専大柔道部が掲げるモットーを選手全員が体現した。何度倒されても、投げられても必死にもがいて食らいつく。しかし、あと1歩、ほんの1歩足りなかった。試合に出場した選手もできなかった選手も涙が止まらなかった。「チームの方針としても戦略通りだったので…。ただ最後、向こうの方が1枚上手だったっていうだけですね…」。主将の織茂峻伍(経営4・木更津総合)は言葉を詰まらせながらしみじみと振り返った。
▲試合後のミーティングで言葉を詰まらせながらも全員に語り掛けた織茂
序盤から強敵相手にも粘り強く戦った。先鋒の志村洸太(商3・つくば秀英)と次鋒の織茂がやや攻め立てられる形になるが、耐えきって引き分けに持ち込む。
▲先鋒に立った志村は身体を張って耐え抜き、後半は優勢だった
▲織茂は残り50秒のところで顔を負傷。治療中を「気持ちの整理ができた」とプラスに捉えた
すると、五将の鎌倉啓太郎(経営1・習志野)が先輩2人の粘り強い姿勢に応えた。開始から積極的に懐を伺うと、試合時間の半分を切ったところで一瞬の隙をついた。強気に押し倒すと、すかさず固め技に入り封じ込めた。見事1本を獲得し、専大に白星をもたらす。
▲すかさず固め技に入り1本を取った鎌倉。専大に流れを呼び寄せた
ここでさらに追い打ちをかけたいところだったが、強敵も黙ってはいなかった。中堅の松田新太(法4・國學院栃木)が粘られて引き分けとされると、五将の飯村成満(法1・水戸啓明)は開始わずか1分で技あり、その10秒後に1本を決められた。 いずれも背中から豪快に投げられ、「相四つがまず苦手っていうのもあるし、それプラスで担ぎ技だったので…。それでもう相性が最悪だった感じです」と唇をかんだ。入学してから半年まで凄まじいスピードで成長してきたルーキー。自らを責め、悔し涙であふれた。
▲ここまで3戦3勝とチームを支えてきた松田は引き分けに
▲飯村は早々から劣勢の展開とされ、最後は投げられて1本を取られた
続く野村晟也(経営2・加藤学園)も引き分け、チームの命運は大将に座った佐藤優磨(商4・広陵)に託された。1勝1敗だったが、五将の際に技ありを取られたため、わずか10ポイントの差でリードされる展開。開始早々から果敢に攻め込むも、足をかけられると連続で投げられ危機一髪。その後はなんとか粘り続けると、時間の経過とともに相手の指導(柔道における反則の1つ)が2回となり、あと1回出れば反則勝ちという状況に。しかし、残り1分半を切ったとき、ほんの一瞬だった。相手の素早い切り返しに反応できず、あっという間に投げられた。佐藤は咄嗟に受け身を取り、技ありの判定。
▲一瞬の隙を突かれて投げられた佐藤。相手は反則負けまであとわずかだった
だが、ここで審判団が集まり審議。1本か技ありか――。佐藤、専大ベンチは祈るように結果を待った。数秒後、告げられた結果は「1本」。無念にも試合場に響き渡った主審のコールが選手全員の胸を突き刺した。
▲「技あり」の判断が覆り「1本」。コールが響き渡った
「自分のせいで負けました。それだけです…。僕がもう万全の状態だったら絶対勝てる相手というか、勝たないといけない相手だったんです。全然取れる相手だったのだから、僕の責任です…」と全ての責任を背負って立ち上がれなかった。
「万全の状態」とは、ほど遠かった。実は2週間前の練習の際に左膝を負傷。歩くのも引きずるほどの痛みが走っていた。「練習も全然できてなくて。本当にテンパっちゃって、自分が今何してるのかもわかんなくて…。(投げられた際)入られた瞬間とかも、もう全然反応できなかったです…」と明かした。しかし、藤田純監督は「そこ(ケガ)に至る過程で、やっぱりしっかり調整させてやれなかったっていうのは、監督の未熟さかなっていう…」とかばった。
▲膝のケガを押して出場していた佐藤。試合後は敗戦の責任を負って立ち上がれなかった
これまで何度も跳ね返されてきたベスト8の壁を登りきるまでわずかな差だった。「桐蔭横浜は強いんよ、流れがあっちいったりこっちいったり。指導、向こうが2あって、あと1とったら勝ちだってところでダメだったじゃん。ほんとにもうベスト8が見えてる感じだったんよ。ほんとにもう見えてたんだけど…。次の日大(との試合)も見えてたんだよね…。甘くないな…」。指揮官は並々ならぬ悔しさを押し殺し、言葉を繋いだ。今大会選ばれたメンバーには下級生が多く、結果を出した選手も残る。今回味わった悔しさを忘れず、来年こそ悲願のベスト8へ進むために稽古を積み重ねる。
▲昨年初戦敗退の悔しさから這い上がってきた4年生。想いは後輩に託す
▽織茂峻伍主将
「今回は4年間の集大成でキャプテンとして、この1年間しっかり作ってきたことは、チームとしては出し切れたのかなとは思うんですけど、最後は4年生の意地を見せたかったんですけど、昨日からあんまりいい試合ができなくて…。 悔しさの残る試合になりました。
(新チームへ)すごい土台ができてきたチームだと思うんで、今の勢いをそのまま崩さずに、しっかりと来年もやりきって欲しいです。
(主将をやりきって)自分は本当にいろんな人に支えられてやってきたので…。ほんとにみんなに感謝しかないし、恩返しできなかった悔しさが残っちゃってる感じです…」。
▲織茂主将
▽藤田純監督
「4年生は信頼してるので。やっぱり最後はどうやっても4年生を出そうかなと思って。本人もやるって言ってるので。それだけずっと一緒にやってきて、1年生より2年生、2年生より3年生。3年生より4年生。1年ずつだんだん信頼感が厚くなっていく。その中で、やっぱり佐藤がやるって言うんだったらやってもらうしかなかった。
今回のチームは本当に凄く良い。なんかさ、凄い(チーム)一丸となって、ほんとに感動して苦しい試合もあったけど、粘って粘って(戦い抜いた)。
さっき試合終わったあとさ、恥ずかしいぐらい大学生なのにもう号泣してたんよ、みんな。試合に出てるやつも出てないやつも。 やっぱりこの悔しさ、 1回ベストイ8目指してチャレンジ。良い選手はたくさん残ってるから、この悔しさだけは忘れないようにして、また頑張れればいいのかな。
(桐蔭横浜)に比べてうちの学生なんて部員も少ないし、スポーツ推薦もちょっとしかない。正直、色々な面で環境が全く整ってない。 その中で本当によく頑張ってくれたなって思う」。
▲藤田監督
▽監督から絶好調だと言われていた野村晟也
「2年生としては、やるべきことはできたかなと思います。コンディションは良かったです。
(今大会で)もう自分が取れる(勝てる)選手だなっていうことがわかったので来年に繋げていきたいのと、(課題は)まだ自分のメンタルの方が足りてないので。ほんとは(引き分けではなく)取りたかったんですけど、 自分の気持ちが相手に負けてしまいました。
(これから)今年よりも一丸となって、またこの場でみんなで戦いたいです。
(4年生へ)とても心強くて、引っ張ってくれる安心感があります」。
▲野村
▽3回戦唯一の白星・鎌倉啓太郎
「(出た2戦で2勝。)最低限の仕事はできたかなって思います。
(これから)もうほんとに実力がないので、自分は1試合、1試合死ぬ気でやっていきたいです。やってきたことを機械的に出せるようになりたいです。
(4年生は)ほんとにお兄ちゃんみたいな存在で…。引っ張ってくれる感じで優しくしてくれました」。
▲鎌倉
▽1、2回戦先鋒で2勝をあげた田宮令都(法1・作新学院)
「(大会を振り返って)ジュニアの方でけがしてからずっと練習も上手くできなくて。はい、それで、先輩と入れ替わって今回掴めたチャンス。9月復帰しました。1番手の優磨さん(佐藤優磨)が怪我してて、できるだけ温存して、自分が繋げるっていうので、1週間前くらいから(監督に)使うぞって言われてました。団体戦っていうのもあるし、先鋒っていうのもあって、緊張はすごくしていて。で、減量も重なってたんでほんとにプレッシャーがすごいありました。
今回は自分からガツガツ攻めてくっていうのをやって、得意の寝技で決め切れたのかなと思います。
(4年生へ)練習見てて、1つ1つの技術っていうか、練習の取り組み方だったりとか、 自分がまだまだ知らないことっていうのをいっぱい知ってるなっていうのは感じたんで。まだ卒業までには時間があるので先輩が来てくれたタイミングに色々技術とか、試合へ臨む準備だったりっていうのを教えてもらっていきたいなと思います」。
▲田宮
文=河上 明来海(文3)
写真=小池佳欧(文2)