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<2023年度全日本学生柔道体重別選手権=9月30日 日本武道館>
「感動させてもらった」。藤田純監督の口から自然に言葉がこぼれる。またも心を動かしたのは期待のルーキー飯村成満(法1・水戸啓明)だった。
今月3日の東京学生体重別選手権大会でも、根気ある試合運びが指揮官の胸を震わせたばかり。今回は専大勢で唯一、講道館杯予選を突破し、堂々と躍進した姿を見せつけた。
▲相手の出方を伺う飯村
最も白熱したのは、講道館杯出場権を懸けた3回戦。相手の出方を伺いながら粘り強く闘い抜いた。ラストは見事な技ありで場内を沸かすと、指揮官は畳の隅で嬉しさのあまり拳を突き上げた。「本当に嬉しくて、泣きそうだった」と微笑んだ。
長丁場となった準々決勝は接戦の末、敗戦。手に汗握る大激戦で、僅かな差が勝敗を分けた。ほんの一瞬、隙を突かれて豪快に投げられた。払い腰。集中力の欠如が大きな壁となって立ちはだかった。
▲講道館杯出場権を懸けた試合前の様子
試合後のルーキーは、目指していた切符を手に入れてホッとしていた。冷静に試合を振り返りながら「体力の無さとか、決め手の特定もベスト8の時にはあまり出来ていなかったので、講道館杯に向けて練習していく必要があると思いました」と、少々厳しめの自己評価。課題はスタミナであることに間違いなしだ。
藤田監督はというと、準々決勝をじっくり思い返していた。「ちょっと燃えたかな…」言葉を探しながら、そう呟いたのは、2度目の治療から飯村が戻ってきた時のことだ。微傷した中指を手当した直後。「勝つぞ」と鼓舞する姿が印象的な場面だった。
「高校の時は個人戦でも活躍したことがなくてな」。過去の実績も含め、スカウトした本人なのだから熱くなるのも当然だ。「なんかやりそうな雰囲気があった」と、紙一重の勝負に賭けていた心情が、手に取るように伝わってきた。
▲準々決勝試合前の藤田監督と飯村
11月5日の講道館杯に向けて飯村は「挑戦者として1試合でも多く勝てるように整えて、次の試合で勝ち上がれるようにしたいと思います」と、気持ちはすでに準備万全だ。ただ一人、出場権を獲得した若き戦士の向上心が、さらなる成長を加速させていく。
文・写真=小山明香(文2)