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<関東大学リーグ1・2部入替戦=12月13日 熊谷G 専大33ー19 大東大>
入替戦で大東大に勝利し、2021年以来となる1部リーグ昇格を果たした。前半3分、FB永井大成(経営3・東福岡高)のペナルティゴール(PG)で3点を先制。その後は拮抗した展開が続くなか、前半34分には自陣トライゾーン手前でのタップキックから3ー7とリードを奪われる。以降は敵陣でのプレー時間が続くもトライを奪えず、試合を折り返す。
後半立ち上がりから攻める専大は、6分に再び永井のPGで1点差に詰める。以降は点の取り合いが続き、16―19で迎えた後半33分にはモールを押し込み、LO髙橋尚大(文3・東海大相模高)のトライで逆転。ロスタイムにはCTB池田太陽(経済1・長崎南山高)とFL今村琉慈(経済3・國學院大學栃木高)の連続トライで勝負を決定付ける。
試合は33―19で専大が勝利し、会場は歓喜に包まれた。2021年以来4年ぶりに1部へ復帰し、強豪復活に向けた戦いが始まる。


▲石倉体制3年目、"BROW UP"が結実
2022年以来の再戦となる大東大との一戦。前半は、早い時間帯で専大が先制すると、拮抗した展開が続く。専大は前半序盤、敵陣22m左サイドでのラインアウトから中央にボールを繋いで攻め込み、相手のオフサイド(ボール保持側のチームの選手が、ボールを保持する選手よりも前方にいる反則)を誘発。永井はショットを選択し、前半3分にPGで早くも先制に成功。

▲先制後は相手のディフェンスに阻まれ、得点を奪えない
以降は両チームともに反則が重なり得点が入らない。攻めきれない時間帯でも、LOヴィリ・ムナ、FLノア・トファエオノ擁する大東大の強力な攻撃を持ち前の堅いディフェンスで抑え込む。しかし、30分台に突入すると自陣でのペナルティが続き、大東大にリードを奪われる。31分には相手のラインアウト起点で素早いランを食い止めるが、専大のペナルティ。その3分後、自陣トライライン目前でペナルティを与えると、タップキックから一瞬の隙を突かれて逆転される。専大は4点を追いかける状況になっても攻め続け、人数をかけてトライライン付近に押し込む。しかし、得点には至らず3-7で試合を折り返す。
後半に入ると、永井の連続得点で一気に試合を優位に進める。後半6分、大東大の反則から再び永井のPGで1点差に詰める。1分後には敵陣右サイドのラインアウトを起点に、中央から左へとバックス展開。CTB佐藤弘彬(経済3・保善高)からパスを受けた永井は相手の追走を振り切って逆転のトライ。永井は自らコンバージョンキックも決めて13-7。



▲永井はトライライン左隅まで駆け抜け、一時逆転のトライを決める
その後は大東大に2本のトライを許し、力のある攻撃を見せつけられる。後半15分に相手のラインアウトから外国人選手のアタックを食い止めるが、オフサイドの判定。17分、自陣トライライン手前でのラインアウトからモールを押し返せず、大外のスペースを走り込んできた相手にトライを喫して13-14。5分後、FL大谷亜蓮(経営3・國學院大學栃木高)からパスを繋いで得点を狙うと相手のミスを誘い、永井のPGで16-14と再逆転。だが、後半29分には自陣トライライン目前で、大東大ボールのラインアウトからモールを組むと、ボールを持ち出した相手のグラウディングで16-19。
▲大東大にトライされるなど、試合終盤まで接戦が繰り広げられた
試合は終盤に差し掛かると、専大は持ち味のセットプレーで本領発揮。応援席からの専修コールに後押しを受け、後半33分には相手のコラプシング(スクラムやモールを故意に崩す反則)から、同点に追い付くショットではなくトライで逆転を目指すラインアウトを選択。敵陣左サイドからのラインアウトでLO青木秀太(経済4・大東一高)がボールを確保。モールでの勝負になるとそのまま押し続け、LO髙橋尚大(文3・東海大相模高)のトライで3度目の逆転。永井はタッチライン際の難しい角度からコンバージョンを成功させると、高精度のキックにどよめきが起こり、歓声が湧き上がった。




▲春から磨いてきたセットプレーで髙橋がトライ


▲永井は精度の高いコンバージョンキックで観客を沸かせた
リードを奪い返したものの、試合終盤は自陣トライライン手前で守備の時間が続く。後半37分、相手のラインアウトを起点にキックパスでトライを狙いに来るが、間一髪のところでインゴールエリアにボールを置き、失点を防ぐ。だが、このプレーをきっかけに、自陣トライライン目前で攻防が繰り広げられる。数分間にわたる連続攻撃に耐え続けると、人数をかけたディフェンスで相手のペナルティを誘発し、ピンチを切り抜ける。



▲相手の猛攻を凌ぎ、薄氷のリードを守り切った
ベンチで戦況をうかがっていた石倉監督は、「本当に守り切ってくれ、と頼むしかなかった。皆が前に出てタックルしてくれていたので、そこは気力と精神力でやってくれた。そこだけ守り切れば絶対にチャンスが来ると思っていたら、2つチャンスが来たので、やっぱり良かったなと思う」と一連の場面を振り返る。
ロスタイムは7分、猛攻を抑えると監督の言葉通りに好機が訪れる。43分に相手のオーバーザトップ(相手側に倒れ込み、ボールを出させないようにする反則)で得たPGは失敗に終わると、大東大はすかさず攻撃を再開。しかし、専大は素早い守備からターンオーバーで攻撃側に移ると、SH神園然(経済2・東福岡高)のキックパスに応えたCTB池田太陽(経済1・長崎南山高)のトライで28-19と点差を広げる。


▲池田は1年生ながら、大一番で結果を残した
試合終了間際には再びトライを奪い、勝利を手中に収める。敵陣でWTB佐藤瑛斗(経済2・日川高)のビッグゲインで22mライン以内まで持ち運ぶ。佐藤瑛斗のチャンスメイクからフォワードの連続アタックで攻め込み、最後は神園からパスを受けたFL今村琉慈(経済3・國學院大學栃木高)のトライで14点差をつける。


▲佐藤瑛斗はスピードを活かしてチャンスを演出


▲今村は相手ディフェンスの間を縫うようにグラウディング



▲1部復帰を達成し、歓喜に満ち溢れた
その後、33-19でノーサイドの笛が鳴ると、選手達は1部昇格の喜びに酔いしれた。過去3年間の入替戦では手が届かず、悔しい結果に終わった。だが、石倉体制3年目となる今年、ついに最高目標を達成した。来季から再び戦いの場を1部リーグに移すが、新参者として今季1部王者・東海大などの名だたる強豪に立ち向かう。 
▲専大の応援席に挨拶すると、大歓声に包まれた

▲石倉監督(中央)は着実にチームを成長させ、1部昇格に導いた
試合後、石倉俊二監督は今の心境を聞かれると「嬉しいの一言です。本当に皆がよくやってくれた。ここ数年は昇格に指がかかっているのに外れてきたので、本当に今日は皆がきちんとやってくれて、感動しています」と万感の思いで答えた。
永井の活躍については「普段からもっとやれよ」と笑顔でツッコミながらも、その功績を称えた。
専大ラグビー部に在籍する選手達にとって、1部リーグでの戦いは初となる。来季は「今と変わらずに思いっきりチャレンジしていって欲しい。1部で縮こまって、また(1部残留を懸ける)入替戦というのは嫌なので。そのままの勢いで行ってほしいので、今日みたいに毎試合戦っていって欲しい。」と期待を込める。そのうえで「今日、一生懸命やっていて『80分戦える力を持っている』と凄く感じたので、本当に普段からそうやってよって思った。そのような戦いが出来ることを証明したので、それは来年のチーム始動の時に皆に言いたい」と大東大に通じた底力を糧に、1部で再スタートを切る。
主将の吉田を含む4年生の選手達には「感謝しかない。本当によくやってくれました。今シーズンが始まる時には色々と話してきて、『本当に大丈夫かな』と心配したが、徐々にレベルアップしてきた。夏合宿あたりから皆が急激に良く喋るようになって、チームがまとまってきたと思う。ディフェンスもレベルアップして、試合の時でも良くなっていった。温(吉田温広)が出場していないジュニアの試合(ジュニア選手権大会カテゴリー2)でも、皆が『勝とう』という気持ちになってやってくれていたので、それが最後の最後に結果が出たと思っている。4年生がチームを引っ張ってくれたので凄く感謝している。最後の方は僕も何も言わなくて、それぞれで良く話してくれた」と、この1年間を労い、感謝の想いを語った。
専大ラグビー部の選手時代には1部リーグでプレーしてきたが、監督としては初めての1部リーグで指揮を執ることになる。来シーズンは「とにかくチャレンジャーとして頑張る。上(1部)に上がったら『またすぐに下(2部)に落ちたよね』と言われないように、しっかりとまたチームを作って頑張っていきたい」と強く決意した。

▲永井はこの試合で18得点と大躍動
1部昇格の立役者となった永井は「嬉しいです。1年生の時から(1部昇格を)目標としてきた。ずっと入替戦で負けてきたので、今日勝てて嬉しい気持ちと、来年1部でどうやって勝てるのかという部分にフォーカスして頑張りたい。入替戦に来られたこと、僕たちが来年1部でプレー出来るのも4年生のお陰。今日は打ち上げがあるので、そこで感謝を伝えたい」と、1部昇格の嬉しさを語った。
前半は膠着状態が続き、「前半はチームとして悪い雰囲気だった。どこかで切り替えなければいけなかったので、自分が変えてやろうと思っていた」と勝利への熱い想いを明かし、後半7分には自身のトライで逆転に成功。「(トライの場面は)良い感じにスペースが空いていたので、そのまま行ったらトライ出来た。僕だけの力ではなく、周りが作ってくれたスペースだと思うので、決めきることが出来て良かった」と振り返った。
後半30分台にはトライを2度決められたが、動じる様子は無かったと話す。「僅差だったので、もう一度やるべきことをやって得点を取れば逆転出来ると思っていた。トライを取られて誰も焦っている味方はいなかった」と、気持ちを冷静に保ったことが勝因と分析する。
初挑戦となる1部リーグでは「身体が大きい選手が沢山いると思うので、個々で身体を作っていくことが大事になってくる。高校の時(東福岡高校)にやっていた選手が沢山いる。僕たちは2部から上がってきた側なので、チャレンジャーとして立ち向かっていきたい」と意気込んだ。

▲青木はディフェンスだけではなく、攻撃面でラインアウトの起点を担った
青木は入替戦を終えて「去年の雪辱を果たせて嬉しい。今年は個性豊かな選手が沢山いて、そのような選手たちがまとまって、チーム一丸となって戦えたことが1部昇格に繋がったと思う」と話した。
青木は大学ラグビー4年間を「1、2年は怪我等で苦しんだが、3年目で初めて公式戦に出場した時は4年生中心で頼もしさがあった」と振り返り、「今年は公式戦に出場した選手も含めて4年生の人数が少なかったので、初めて公式戦に出るメンバーが多かった。最初は不安な気持ちがあったが、試合を重ねるごとに全員が成長していけたと思う。今年の実績があるので、来年は自信を持って戦っていって欲しい」と、来季1部で戦う選手たちに背中を押すコメントを残した。
共に戦った後輩たちには「正直、今年の公式戦は厳しくなると思っていたが、入替戦に行けて1部昇格を果たせた。間違いなく実力はあるので、こうやって1部昇格出来たのも後輩達のお陰だと思っている。今年は後輩中心のチームだったので、来年もこの調子で頑張ってくれれば必ず良い成績を残せると思うので、信じている」と感謝の想いを語った。

▲最高の結果で今シーズンを締めくくった
かつては全国大学ラグビー選手権で名を馳せた専大ラグビー部。その強さを取り戻すため、1部リーグで再び挑み始める。
文=藤林利英(文2)、写真=君嶋悠樹(経済2)、佐俣莉子(法1)

